宇宙初期での宇宙線による磁場生成機構とガスの加熱機構について理論的に調べた。初代銀河中の超新星残骸で、宇宙線が加速される。この宇宙線による赤方偏移z=2-20の宇宙における新しいガスの加熱機構を定量的に評価し論文にした。宇宙線が銀河間空間に広がっていく際、宇宙線電流が生じる。その宇宙線電流を打ち消すために生じる熱的電子の帰還電流は、熱的ガスとの相互作用による抵抗を感じる。宇宙初期に形成された銀河周囲でのこの電気抵抗によるガス加熱を定量的に評価した結果、これまで考えられていた宇宙初期でのガスの加熱機構(X線加熱と宇宙線 による電離加熱)に比べて、宇宙線電流が誘導する抵抗性加熱の方が効率良くガスを加熱する時期があること、ガスの加熱によって抵抗が弱くなり、最終的には抵抗性加熱が効かなくなることが明らかになった。 また、この抵抗によって生じる抵抗性電場は、宇宙線が作り出す2次電子を加速させ、放電現象を引き起こす。その反作用として、熱的電子の帰還電流と抵抗性電場が弱くなる。これらの放電現象と抵抗性電場の発展を調べるため、2次電子の生成、電場による加速、原子や分子の励起や電離にともなるエネルギー損失、抵抗性電場の発展を同時に数値的に解いた。その結果、電子雪崩が生じること、その後の準定常状態では、有限の抵抗性電場が残ること、その電場の大きさは、宇宙線電流の大きさによらず、ガスの電離度に依存することを明らかにした。また、電子雪崩が起きている最中の電離率は、これまで考えられてきた宇宙線による電離率にくらべ100倍くらい大きくなり得ることを明らかにした。また、電離率だけでなく、原子や分子の励起率も10-100倍くらい大きくなることを明らかにした。これらの成果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。
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