本研究の目的は、重力波観測主に大型電波干渉計SKAを通じて大幅な精度向上が見込まれるナノヘルツ帯の重力波観測を通じて、アクシオン暗黒物質の痕跡の探査を行うことである。これに向けアクシオン暗黒物質の模型の自由度を考慮した上で、予言される重力波振幅の大きさ及び周波数を見積もり、その観測可能性を議論することであった。 2021年度までに、アクシオン暗黒物質が放出する重力波スペクトラム主に周波数・振幅の理論予言に関する基本的理解を構築することができた。前年度までに得られた理解をもとに、2022年度は研究分担者の北嶋氏、西澤氏とともにアクシオン暗黒物質由来の重力波の、大型電波干渉計SKAによる観測可能性の検証を行った。特に、アクシオン由来の重力波の特徴として、右巻きと左巻きの重力波の振幅が異なる(円偏光を持つ)ことが挙げられる。これまでにパルサーの観測を通じた重力波検出法(パルサータイミングアレイ)を用いた円偏光を持つ重力波検出において直面する困難な点を整理した上で、円偏光を持つ重力波の検出可能性を検証した。現在はこれらの成果を論文としてまとめているところである。
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