超弦理論は量子重力を記述でき、ゲージ重力対応を自然と導く。ゲージ重力対応は、量子重力をより定義されている場の量子論で記述可能にする画期的なものである。本研究の目的は、超弦理論の高エネルギー極限で現れる高階スピン重力を利用し、量子重力や超弦理論の解析を行うことにある。最終年度は、本研究課題のまとめとして、ゲージ重力対応の一具体例の証明と、ゲージ重力対応の宇宙初期への応用の二種類を行なった。
(1) ゲージ重力対応は一般に強弱対応であり、ゲージ理論の弱結合領域が弦理論の高エネルギー領域に対応する。ゲージ重力対応は未だに一般的な証明がなく、強弱対応であることが原因の一つである。ここでは、NSNS-fluxのみを含む3次元反ドジッター時空上の弦理論を用いたゲージ重力対応の証明を行なった。この場合の弦理論は可解であり、高エネルギー極限を直接扱うことができる。この事実を利用することで、この場合のゲージ重力対応の証明に成功した。以前の研究成果を発展させ行なった。一具体例の証明でも大きな成果であるが、証明で用いた手法は一般に拡張可能と考えている。
(2) 宇宙初期はドジッター時空で近似でき、その時期では重力の量子効果が強いと考えられる。ところが、ゲージ重力対応は主に反ドジッター時空で研究されており、ドジッター時空ではほとんど理解されていない。昨年度、3次元ドジッター時空での高階スピン重力を用いたゲージ重力対応の提案と検証を行なった。本年度は、その提案を利用することで、ゲージ重力対応による宇宙初期における密度揺らぎの相関の計算に成功した。また、宇宙は無から始まったとされるが、そのような時空は複素計量で記述できる。どのような複素幾何が許されるかは、長年の未解決問題である。我々は、ゲージ重力対応を利用した判定法を開発し、具体例として3次元ドジッター時空に適用した。
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