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2019 年度 実績報告書

ホログラフィック双対の場の量子論からの導出

研究課題

研究課題/領域番号 19H01897
研究機関京都大学

研究代表者

杉本 茂樹  京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80362408)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードホログラフィックQCD / バリオン
研究実績の概要

我々は2004年に、原子核の内部に潜む核子に働く強い力の基礎理論である量子色力学(QCD)を弦理論の枠内で実現し、ホログラフィック双対と呼ばれる、曲がった高次元時空における弦理論によって記述する「ホログラフィックQCD」と呼ばれる理論を提唱した。この理論はQCDに対する伝統的な解析法とは全く異なる解析法を与え、QCDの様々な性質を理論的に理解する上で大変有用であることが分かっている。特にハドロンの励起状態は格子QCD等による解析が容易ではないが、ホログラフィックQCDを用いると、実験で観測されているメソンのレッジェ軌跡が再現され、その原理を弦の回転や振動によって容易に説明することが可能になる。2019年度は、このホログラフィックQCDを用いて、バリオンの励起状態のスペクトルを調べる研究を行った。ホログラフィックQCDにおいて、バリオンはDブレインと呼ばれる膜状の物体に弦がくっついた状態として記述される。これまでの研究で、核子はもちろん、一部のバリオンの励起状態の解析も行われてきたが、今回はバリオンを表すDブレインについた弦の振動モードの励起状態を含むような状態を取り扱う方法を初めて開発し、得られるスペクトルを詳しく解析した。その結果、アイソスピンが 1/2 でスピンが 3/2, 5/2, 7/2 であるような状態など、これまでの解析では得られなかった多数の新しい励起状態を見出した。これらの予言と実験で確認されている核子の励起状態とを比較すると、質量、スピン、パリティの分布の定性的な振る舞いが非自明に一致しており、実験で見つかっている多くの状態に対して理論的な解釈を与えることができた。この研究成果については論文として発表し、PTEP 誌に掲載されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究費で雇用した研究員の横山氏と共同で、場の理論の摂動計算によってホログラフィック双対におけるバルクの幾何の情報を引き出す研究を行ったが、共形対称性のある系ではある程度、予想される結果を得ることができたものの、共形対称性のない系では、バルクの幾何の情報を引き出す方法に不定性があることが判明し、期待していたような成果が得られなかった。ただ、他の研究では一定の成果が得られているので、ひどく遅れているというわけではない。

今後の研究の推進方策

まずは共形対称性がある場合に AdS 時空を再現する議論を整備することから始める。プローブブレイン上の有効理論からバルクの幾何を読み取る方法を一般化し、共形対称性がポアンカレ対称性に自発的に破れる場合に得られる有効理論からバルクの幾何を読み取る方法を開発する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Stringy excited baryons in holographic quantum chromodynamics2020

    • 著者名/発表者名
      Hayashi Yasuhiro、Ogino Takahiro、Sakai Tadakatsu、Sugimoto Shigeki
    • 雑誌名

      Progress of Theoretical and Experimental Physics

      巻: 2020 ページ: -

    • DOI

      10.1093/ptep/ptaa045

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Anomaly cancellation in type II string theory, revisited2019

    • 著者名/発表者名
      杉本茂樹
    • 学会等名
      East Asia Joint Workshop on "Fields and Strings 2019" and 12th Taiwan String Theory Workshop, NTHU, Taiwan
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 2dim QED and String Theory2019

    • 著者名/発表者名
      杉本茂樹
    • 学会等名
      SNU mini-workshop on Quantum fields and strings, Seoul National University, Korea
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Holographic QCD - review and recent development -2019

    • 著者名/発表者名
      杉本茂樹
    • 学会等名
      15th Rencontres du Vietnam, "Perspectives in Hadron Physics", ICISE, Quy Nhon, Vietnam
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Generalized WZW-term from holographic QCD2019

    • 著者名/発表者名
      杉本茂樹
    • 学会等名
      Holographic QCD 2019, Nordita, Sweden
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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