研究課題/領域番号 |
19H01900
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
斉田 浩見 大同大学, 教養部, 教授 (80367648)
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研究分担者 |
孝森 洋介 和歌山工業高等専門学校, 総合教育科, 准教授 (30613153)
高橋 真聡 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30242895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一般相対性理論 / ブラックホール / 銀河系中心 / すばる望遠鏡 |
研究実績の概要 |
2019年度の実施計画では5つの検討項目を挙げた。このうち、「測定データと理論予測の統計的適合度のベイズ解析の数値計算コード開発」、「時空計量のPrametrized Post-Newtonian(PPN)展開係数の評価方法の検討」、「ブラックホール時空の測地線方程式の厳密解の利用方法の検討」を実行した。 「ベイズ統計解析」は、その基礎事項を雇用研究員と共に学習して身に付け、数値コードの開発に着手した。そして、ベイズ統計解析をひとまず実施できる数値コードのプロトタイプは作った。しかし、本研究での理論予測計算では微分方程式を繰り返し数値的に解く必要があるので、たとえばPPN展開係数の評価をするには(次の段落も参照)実用的な計算時間に収まるような数値コードの工夫がまだ必要である。 「時空計量のPPN展開の係数の評価」は研究代表者が実行した。ベイズ統計解析はまだ適用できる程度には数値コード開発は進んでいないものの、カイ自乗フィッティングは実施できる段階までは進めた。そして、参考値として、PPN展開係数の推定値を既存の測定データとのカイ自乗フィッティングで導出した。もう一段、研究を深めたら論文化できると見込んでいる。 「測地線方程式の厳密解の利用」は、雇用研究員が光源星の運動の厳密解を基にベイズ統計解析の数値コードのプロトタイプを作った。今後、改良を加えて計算時間の短縮と、宇宙定数を取り込んだ計算への拡張を予定している。一方、星から届く光の運動の厳密解の利用方法は、分担研究者が主導して研究し、数値コードへの実装が可能になりつつある。光の運動もより厳密に扱えるようになることで、当初の実施計画の一つ「次世代望遠鏡TMTによる観測計画の立案」につながる。 なお、当初の実施計画の一つ、「欧米グループのデータが公開された場合の利用」については、彼らのデータ公開がなかったために実施を見送った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベイズ統計解析のための数値コード開発において、星と星からの光の運動方程式を繰り返し数値的に解く必要があるのだが、これが想定以上にパソコンの計算時間を長引かせる要因になっていることが判明した。そこで、(1)如何にして数値計算を効率化するかというプログラムの書き方の工夫と、(2)統計解析の数理的な基礎にまで遡った効率的かつ新たな発想の計算方法の検討、という2つを同時進行することになり、数値コード開発に遅れが生じている。 なお、特に2020年度に繰り越した研究計画では、コロナ禍のため、分担研究者や研究協力者との研究打ち合わせの頻度が落ちたために研究遂行に必要な情報交換が遅くなったことも、上記の数値コード開発が遅れた要因の一つである。 また、次世代大型望遠鏡TMTの建設計画が現地(ハワイ島)の事情で遅れているため、TMTを利用した研究戦略の立案も遅れが生じざるを得ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
ベイズ統計解析の数値コード開発の困難な点が具体的に整理されてきた。雇用研究員と共に、これらの問題を一つ一つ潰して、数値コード開発を確実に進めていく。 また、PPN展開係数の評価方法の基礎は確立したので、これにベイズ統計解析を適用できるような数値コード開発を進める。 一方、星から届く光の運動方程式(測地線方程式)の厳密解の利用について、分担研究者が主導して数値コード開発を進めており、これを完成させる。これは、次世代大型望遠鏡TMTを利用した研究計画の立案に欠かせないものである。 さらに、本研究の進展によって派生した新たな検討事項として、アインシュタイン方程式の宇宙定数も含んだブラックホール時空も想定し、測定データとのフィッティングで宇宙定数への制限付けも検討したい。これは、宇宙論の研究にも波及が期待できる。 加えて、派生した新たな検討事項として、銀河系中心巨大ブラックホールの周辺に存在する可能性がある「暗くて見えない質量分布」の推定、がある。これも論文化できるだけの展望が描けることが分かったので、これから進めていく。 以上のような研究展望を踏まえ、すばる望遠鏡の観測プロポーザルも提出し、測定データの積み上げもおこなっていく。
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