研究課題/領域番号 |
19H01900
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
斉田 浩見 大同大学, 教養部, 教授 (80367648)
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研究分担者 |
孝森 洋介 和歌山工業高等専門学校, 総合教育科, 准教授 (30613153)
高橋 真聡 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30242895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一般相対性理論 / ブラックホール / 銀河系中心 / すばる望遠鏡 |
研究実績の概要 |
2020年度は、銀河系中心ブラックホール(BH)を周回する星S0-2、S24の観測データから、(1) 重力理論の検証、(2) BH周辺の暗くて見えない質量分布の推定、(3) 次期大型望遠鏡TMTを活用した近い将来の研究展開の検討、を進める予定だった。これらの経過と現状は以下の4つにまとまる。 1.コロナ禍等の社会要因から、すばる望遠鏡の補償光学レーザーの更新が遅れ、星S24の観測が予定通りに進まなかった。そこで、星S24でなく既に観測データがあるS0-6に注目した。星S0-6の観測データは重力理論の検証に使えるほどの測定精度がないが、未だその星の運動の加速度は測定されていないので、まず加速度の検出を目指し、観測データから加速度を検出する数値計算コードの開発に着手した。現在、そのコード開発の途中である。 2.星S0-2の観測データに基づく重力理論の検証では、Parametrized-Post-Newtonian(PPN)法による理論予測と観測データを統計的に比較するための数値計算コードを開発してきた。統計的比較としてのカイ二乗フィッティングを実施したところ、これまで測定誤差に隠れて検出不可と見積もってきた重力レンズ効果が、もしかしたら検出されている可能性が浮上した。現在、その可能性も考慮した理論予測と数値計算コードの改良に取り組んでいる。 3.銀河系中心BH周りの質量分布の推定では、当初の想定よりも精度の高い理論予測が、観測データとの比較には必要だと分かった。現在、理論予測の高精度化にむけた検討を進めている。 4.次期大型望遠鏡TMTの活用検討では、コロナ禍等によりTMT建設が遅れていることから、具体的なスケジュール検討までは進めていない。現在、TMTの設計仕様に基づいた重力理論の検証精度の評価、銀河系中心BH周辺の質量分布推定の精度の評価、新たな研究対象の選定を考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の3つの理由がある。 1.現在の測定精度では星から我々に届く光の重力レンズ効果は、測定誤差のために検出されないと見積もってきた。これは一般相対論を仮定した場合には正しい。しかし、PPN法を使って一般相対論の他の重力理論の可能性も調べようとすると、重力レンズ効果も考慮する必要があることが判明した。この理論的な発見に対応するため、理論予測と統計解析コードに重力レンズ効果も取り入れるという研究項目が追加された。 2.重力理論の検証のための理論予測と観測データの統計的適合度の解析手法として、カイ二乗フィッティングの数値計算コードとベイズ推定の数値計算コードの開発に取り組んできた。その取り組みは研究員を雇用して実施してきた。しかし、その研究員が民間企業に就職を決めたため(2020年度科研費を繰り越した2021年度中に決めたこと)、コード開発の進展が遅くなった。具体的には、現状ではカイ二乗フィッティングの計算コード開発で手間取っており、ベイズ推定の計算コード開発が止まっている。 3.コロナ禍のために代表者と分担者の各所属期間における本務が繁忙化し、研究打ち合わせも制限された。 以上の理由から、満足感を得られるほどの研究進展があったとは思われず、やや遅れている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新たな研究員あるいは研究補助員を雇うことで、統計解析(特にベイズ推定)の計算コード開発を進められる体制を再構築する。 研究分担者との分担はこれまで通り、斉田と研究補助員が重力理論の検証、孝森が見えない質量分布の推定、高橋が次世代望遠鏡の活用と新たな研究テーマの選定、とする。 また、各所属機関におけるコロナ対応も安定してくることで、適切なタイミングでの研究打ち合わせの機会も作りたい。
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