研究課題/領域番号 |
19H01901
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
真貝 寿明 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30267405)
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研究分担者 |
高橋 弘毅 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (40419693)
伊藤 洋介 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60443983)
鳥居 隆 大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 教授 (00360199)
西口 敏司 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (80362565)
島野 顕継 大阪工業大学, 情報科学部, 准教授 (20351463)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一般相対性理論 / 重力波 / データ解析 / 分散コンピューティング / アウトリーチ活動 |
研究実績の概要 |
本研究は「日本発の重力波データ解析法」の開発を目的として,(A)新たな重力波の抽出方法の開発,(B)新たな波源のパラメータ推定法についての手法提案,(C)分散コンピューティングなど計算資源の確保,の3つの柱を設定した.また,アウトリーチ活動も研究計画に含めている.初年度(2019年度)には,(A)に関しては,自己回帰モデル法・Hilbert-Huang変換法などの新たな手法を用いてノイズに含まれる重力波信号を抽出する手法を開発し,テストデータを作成して比較した.(A)(B)に関しては,独立成分解析法を用いたKAGRAの実データ解析を行った.いずれも原著論文として出版済み・掲載決定となっている. 本研究代表の真貝は,2019年8月より日本の重力波KAGRAプロジェクトの科学部門の代表を継続して引き受けることになった.KAGRAは,米欧LIGO/ Virgoの重力波プロジェクトと実観測・解析に関する協定に調印し,2020年2月末より実観測を開始した.重力波の実データ解析を行う準備が整い,本研究も予定通り新たな手法を応用する段階に入る.研究分担者の伊藤はKAGRAのバースト重力波解析の責任者として,高橋は3プロジェクト間のデータアクセス担当者として,日本の重力波プロジェクトの一翼を担うことになった. 初年度の研究成果は,論文発表5,国際会議・研究会発表16,国内会議・研究会発表14,一般向け講演・講義18,専門書翻訳出版1,雑誌への寄稿1,取材協力1である.社会への成果還元については,個々の研究分担者が講演会や出張講義・解説文掲載などで多方面に展開しているが,2020年3月には,本研究代表が中心となって,KAGRA内で教育・一般アウトリーチ活動(EPO)グループを組織し,LIGO/Virgoとのリソース共有の合意を得た.我々のアウトリーチ活動は,米欧とも協調する道筋が整った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,進展している.本研究で開発したコードを,国内研究者で共有できるよう,KAGALIライブラリに組み入れる準備もほぼ整えた.実データを用いた解析の準備も整えた.また,まだ成果には到達していないが目的(A)(B)両者に関わるスパースモデリングを応用する手法についても画像解析のテストコード使用まで行った.目的(C)の分散コンピューティング環境の構築については,予定通り2年目から行う. 初年度に計画したもののうち,修正重力理論での予想される波形モデルなどの理論計算は,まだ発表段階に至っていない.重力波の実解析後に必要となる新たな視点を提供するものとして注力していきたい.
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今後の研究の推進方策 |
2年目は,項目(A)と(C)を中心に進める.初年度に成果発表まで至った自己回帰モデル法・Hilbert-Huang変換法・独立成分解析法などの新たな手法を,特に検出例の多い連星ブラックホール合体に注目して実データに応用する研究を進める.リングダウン重力波と呼ばれる波形の解析から,強い重力場の理論検証にもつながる解析手法を整える.また,分散コンピューティングを行うためのサーバを大阪工業大学情報科学部に設置し,稼働・運用に関する準備を進める. 項目 (C)に関しては,分散型コンピューティング環境のインターフェースを整え,アウトリーチ活動への土台をつくる.令和2年度中には,高校生 ・一般を対象にした「重力波解析研究教材」および「重力波解析アプリケーション」の開発を行い,周波数解析をキーワードにして,高校数学と物理を結び,音声のスペクトル解析などから学べるキットを作成する.そして次年度以降,天文教育業界を通じて,高校やプラネタリウムな どでの試用を行う準備を進める.
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