研究課題/領域番号 |
19H01903
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今井 伸明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80373273)
|
研究分担者 |
大田 晋輔 大阪大学, 核物理研究センター, 准教授 (60548840)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 不安定核 / 元素合成 / 中性子捕獲反応 / 核構造 |
研究実績の概要 |
宇宙を構成する重元素は、超新星爆発や中性子連星合体等の爆発的天体環境下での連鎖的な核反応によって合成されたと考えられているが、その起源天体は未だ明らかにされていない。本研究では、宇宙の元素組成比の第2ピーク構造を形成する質量数130近傍の短寿命放射性同位体の核反応率を調べることで、核反応が生じた状態での中性子密度や温度に制限を与えることを目的とする。2021年度の実績は大きく分けて以下の3つである。 1. 2020年度の反跳粒子検出器アレイのコミッショニングで用いたシリコン半導体検出器とCsI(Tl)検出器のテレスコープアレイのうちCsI(Tl)検出器は、共同研究者からの借用物であり2021年度春に返却することになった。そのため、本実験用に、新たにCsI(Tl)検出器を16個製作した。20個のクリスタルを研磨し、1面を2.5μm厚のアルミナイズドマイラーをはり、また側面は100μm反射材を巻いて製作した。またフォトダイオードからの読み出しケーブルを脱着可能にした。最終的にアルファ粒子を照射し、エネルギー分解能がもともと使っていたCsI(Tl)検出器と同程度であることを確認した。 2. 2022年春にMTが割り付けられ実験を行うことになった。共同研究者と共にビームライン検出器等、実験準備を進めた。 3. 本研究で用いる、新しい中性子捕獲反応率導出法を初めて用いて測定した、長寿命核廃棄物79Seの中性子捕獲反応率に関する投稿論文にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に見出された、不安定核ビーム減速収束装置OEDOの高周波電場発生装置からのノイズによる、ビームライン検出器の不具合は実験遂行にあたって致命的な問題になりうるため、様々な対処法を試みた。結局散乱真空槽とのグラウンドを強化する、信号ケーブルの取り回しを工夫することで、ノイズが許容できるレベルにまで落とすことが出来た。 本研究で用いる新しい中性子捕獲反応率導出法を初めて用いて測定した、長寿命核廃棄物79Seの中性子捕獲反応率に関する投稿論文は、非束縛状態の励起メカニズムについて議論をすすめ、角度分布をしらべることで、前平衡過程で励起されていることが示唆された。核子当たり20 MeV程度のエネルギーで非束縛状態の分光実験は過去に一例報告があるのみであったが、その文献や、現象論的なモデルによる、各励起エネルギー毎の、微分散乱断面積角度分布が実験値と、絶対値を含めてよい一致をしており、本研究での解析の指針を示すことになった。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年の春に実験のマシンタイムが割付られ、実験準備を進めている。実験終了後には速やかに解析を行い、各種国際会議にて結果を積極的に報告する予定である。すでに、国内の宇宙核物理分野でのオンラインセミナーをすることが決まっている。物理学会など、国内会議でも報告する。 79Seについての論文は当初の予定よりも大幅に遅れている。すでに改訂版はできており、共同実験者に回覧後に査読プロセスに入りたいと考えている。
|