場の量子論が予言する真空に潜む構造 (量子電磁気学の場や未発見粒子の場など) を明らかにするための研究をおこなった。以下の二種類の手法をそれぞれ行なった。 一つ目の手法は、大強度フェムト秒赤外レーザーによって真空をポンプし、X線自由電子レーザー(SACLA)の硬X線を用いてプローブする方法である。最終的には500TWのフェムト秒レーザーでポンプする予定であるが、そのためのスタディーとして2019年に0.6TWのフェムト秒レーザーで実験を行なった。その実験データを解析した結果、真空をポンプした効果に起因する事象は観測されなかった。この結果は量子電磁気学の予言値と比べて18桁感度が悪いが、世界で初めてこの手法で得られた結果であるとともに、500TWポンプ実験に向けて、基礎的な実験手法を確立することができた。特に、フェムト秒レーザーの集光点とX線の集光点を時間的、空間的に一致させる技術を確立することができた。また、シグナルとバックグラウンドの分離のためにX線の偏光を利用して感度を向上する方法も検討した。これらの結果は、レーザー学会誌に発表した。 一方、もう一つの手法は、SACLAの軟X線のビームを取り回し、硬X線のビームラインにおいて両者を正面衝突させる手法である。衝突の重心系が実験室系と異なるため、シグナルの放出方向を考慮して、昨年度作成した真空チェンバーとビームライン、検出機の組み合わせについて具体的に検討し、衝突点周りのデザインを行なった。
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