研究課題/領域番号 |
19H01910
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
梶野 文義 甲南大学, 理工学部, 教授 (50204392)
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研究分担者 |
多米田 裕一郎 大阪電気通信大学, 工学部, 講師 (90467019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / Nuclearite / 星間流星体 / 流星体 / macro dark matter |
研究実績の概要 |
本研究では高速で飛翔する暗黒物質の候補であるNucleariteやSQM、さらに太陽系外を起源とする星間流星体の探索を目的とする。暗黒物質はその存在が確実視され、宇宙全体の質量の27%を占めると考えられていて、これまでに数多くの探索がされてきたが未だ発見に成功していない。本研究では、暗黒物質の候補の一つであるNucleariteやStrange Quark Matter(SQM)のようなマクロダークマターが大気中で高速で飛翔するときの発光をこれまでにない高感度のCMOSビデオカメラシステムを複数台用いて探索を行う。さらに、同じ装置を用いて太陽系外から飛翔する高速の星間流星体も探索する。おおよそ10の-7乗 kgよりも大きい質量の星間流星体やその成分についてはまだ観測結果が定まっていないので新しい研究結果が期待されている。本研究は宇宙や太陽系の成り立ちに関する重要な情報を与える可能性がある。 今年度は以下のような研究を実施し、その成果を公表した。 1)日本国内からインターネットを通して米国ユタに設置する装置を遠隔操作で観測ができるシステムの製作と試験を実施した。2)米国ユタのTA実験サイトにカメラ台4基を設置した。3)米国ユタ大学に観測設置の一部を輸送した。4)COVID-19の影響により、本年度中にユタに4台の観測装置を設置する方針を変更し、甲南大学、大阪電気通信大学、日本大学の屋上に設置して観測を開始した。5)取得したデータの解析を進めた。6)これまでの研究成果や今後の研究計画について、ダークマターの懇談会2020 online (darKONline2020) (2020年9月)、2nd DIMS Workshop(2020年12月)、東京大学宇宙線研究所 共同利用研究成果発表会 (Online) (2021年1月)、日本物理学会 (2021年3月) で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の進捗状況は以下のようになっている。 1)遠隔操作で観測ができる4ステーションからなるシステムの製作と試験を実施した。それぞれのステーションには高感度カメラ、データ収集・カメラ制御用PC、環境モニタ、通信システム等を実装されている。これらは観測窓のついた耐侯性のステンレス製容器に収納されている。1台は電源ラインが無いところで運転するため太陽光発電装置の開発を行った。2)日本国内の研究室からインターネットを通して観測装置を遠隔操作ができるシステムを製作した。3)甲南大学、大阪電気通信大学、日本大学の屋上に観測装置を設置して遠隔操作で観測を開始した。4)米国ユタ州のTA実験サイトに観測装置を設置する交渉を行いカメラ台4基を設置した。5)各種の観測パラメータの最適化を行う研究を行った。6)これまでの研究成果と今後の研究計画についての発表を行った。7)本研究への専門家の参加を募り国際共同での研究体制を整えた。この結果、日本・米国・イタリア・ポーランド・スロバキア・韓国の30名を超える研究者からなる共同研究となっている。 本年度に4台の観測装置を米国ユタ州の観測地に送り出し、現地に出張して装置の組立て・設置を完成し、稼働させる予定をしていたが、前年度に一部の装置を輸送した後、COVID-19の影響で他の装置の輸送と人員の出張ができない状態が続いたために、計画の一部を変更し、甲南大学、大阪電気通信大学、および日本大学の屋上に観測装置を設置して遠隔操作で試験観測を開始した。 このため、米国ユタでの装置設置と観測実施の計画の部分に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下のような研究を推進する方策をとる。 1)遠隔操作で観測ができるシステムを引き続き試験する。特に自動観測できるようなソフトウェアの開発に重点をおいて進める。2)このシステムを日本国内や米国ユタのTA実験サイトに設置し観測を行う。3)各種の観測パラメータの最適化を行う研究を行う。4)取得したデータの解析を進める。5)これまでの研究成果と今後の研究計画についての発表を行う。 COVID-19の影響の長期化による、装置輸送の不確実性や国内・海外出張等の困難が予想されるので、国内での研究と観測体制の整備、観測装置の遠隔による操作能力向上のための装置やソフトの改良、ネットを活用した国際的な研究会議をこれまで以上に整えることに注力する。
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