フッ化物結晶に55FeからのX線を照射して、KIDで信号を読み出すことに成功した。エネルギー閾値として1keV以下を実現できることを実証した。また、蛍光読み出し用のシリコン基板にKIDを実装したものの基礎評価を終えた。新しい可能性として、情報通信研究機構から超伝導ナノワイヤーを使った光センサーの供給を議論した。これは当初の予定になかったものであるが、本研究に重要な素子となる。 2020年度に開始したRFSoCによるKIDの読み出しは1素子モードのテスト版が完成し、周波数スイープや時系列データ取得などが正常にできることを実証した。 キャリブレーション装置は、2020年度に引き続き、光電効果を利用した単電子発生装置の開発を進めてきた。UV光源とその導入部については概ね完成し、真空系への導入まで成功している。また、標的として銅とホウ化ランタンに絞り、デザインを進め、プロトタイプまで製作していたが、さらに光電効果を効率良く発生させるための幾何的な設置デザインの検討を行い、その治具の製作も行った。これらを利用し、単電子を発生させ、MCPシステムにより測定を行う。 このMCPシステムの真空系の構築を進めてきたが、到達真空度が想定よりも悪く、実際の測定までは至らなかった。しかし、真空度の改善は進め、なんとかMCPシステムの要求するレベルに達するところまでは進められた。今後も引き続き実際に単電子の測定まで進める予定である。 以上により、蛍光読み出しとキャリブレーションに若干の遅延があるものの、全体的には暗黒物質を探索する準備をほぼ終えることができた。
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