研究課題/領域番号 |
19H01921
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲田 聡明 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 特任研究員 (20779269)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 磁気光学効果 / パルス強磁場 / 真空非線形QED |
研究実績の概要 |
本研究では、精密光学における光技術と強磁場技術を組み合わせて、微小磁気応答を高感度に測定するのに最適な測定系を構築する。またこれを駆使して高真空下で長期測定を行い、真空の非線形QED過程による磁気応答を検証する。本実験は主に、微小複屈折等の磁気応答を測定するための精密光学系、及びその応答を時間変調してstaticなDC成分と弁別するための強磁場印加部より構成される。光学系については、Nd:YAGレーザーからの1064nm光に対し超高反射ミラーを用いてフィネス50万のFabry-Perot共振器を構成した。また共振器長変動に対して厳しい共鳴条件(FWHM=3pm)を満たすようレーザー周波数をフィードバックする制御系を構築した。磁場系についてはピーク磁場9T、長さ20cmの横磁場を発生可能なレーストラック型パルス磁石を用い、ショットサイクル20sで自動データ取得可能なプロトタイプ測定系を構築した。測定帯域としては、磁場のパルス幅約1msに対応する50-500Hz帯のノイズ低減が重要であり、共振器ミラーのSiO2/Ta2O5多層膜で生じる固有複屈折ノイズを調査した。 本年度で既に、同種のパルス磁場変調を用いる先行研究と同程度の測定感度を達成しており、次年度以降、光学系及び磁場印加系に対し更なる改良を行う。またガス及び高真空下での長期測定に耐える光共振器の安定化が必要であり、その調査を平行して進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パルス強磁場を発生する際、磁場応力による振動や音、及び大電流による電磁ノイズが高フィネス光共振器とそのフィードバック系への擾乱となる。そのため、本研究では磁場発生システムと精密光共振器を長期間にわたり安定して運転する技術が本質的に重要である。当初の計画通り、本年度で既に同種のパルス磁場変調を用いる先行研究と同程度の測定感度を達成しており、プロトタイプの測定系においてこの光学系の安定性に関わる調査が大幅に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
高フィネス光共振器の更なる安定化を目指した調査は今後も継続して行う必要がある。また本年度でプロトタイプでの調査は完了し、次年度以降は新設計のパルス電磁石の製作・試験を並行して行う。改良された電磁石と光学系を組み合わせた測定系を構築し、その特性の調査・評価を行う。
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