研究課題
本研究の目的は、スペース重力波アンテナDECIGOが、宇宙誕生直後のインフレーションの期間に生成された原始重力波の検出をより確実に行えるように、我々が考案した、光バネを用いた量子ロッキングの有効性を実証し、DECIGOの目的感度を改善することである。2019年度には、理論面では、、量子ロッキングの効果を評価する方法として平方完成を利用した手法を考案し、それを用いて量子雑音の最適化を行った。また、実験面では、固定鏡を用いた主光共振器システムを構築し、その振る舞いの特性評価を行った。2020年度の研究実績は、まず理論面においては、光バネを組み込んだ量子ロッキングの量子雑音のシミュレーションを行い、設計パラメータの最適化を行ったことである。具体的には、サブ共振器のフィネス、ホモダイン位相、主共振器のディチューニングをフリーパラメータとして、原始重力波に対する信号雑音比に対しての最適化を行った。その結果、光バネ付き量子ロッキングにより信号雑音比が100倍程度に改善できることが分かった。またDECIGOに量子ロッキングを組み込まない形での、設計パラメータの最適化も行った。実験面においては、まず、主共振器の制御回路の最適化を行った。制御のループゲインをピエゾ素子と鏡の系の持つ機械的な共振特性を計測し、安定な制御を実現した。また、補助共振器システムを追加構築し、組み立てを行った。そして、一つの鏡を共有する形で2つの光共振器の動作の準備が完了した。
2: おおむね順調に進展している
理論面では、光バネ付き量子ロッキングの量子雑音最適化に成功し、また、量子ロッキングなしの場合の最適化も行い、論文を3本発表することができ、当初の計画を上回る進展状況であった。実験面では、光共振器の制御の最適化と2台の動作の準備はできたのだが2台の動作にはいたらなかった。したがって、進展としては若干遅れ気味であった。これらを総合すると、研究全体としては、「おおむね順調に進展している。」と判断できる。
2021年度は、理論面においては、量子ロッキングを使わない形で、量子雑音だけでなく熱雑音などの他の雑音も組み込んだ形での設計の最適化を行う。また、実験面においては、補助共振器システムを動作させる。そして、固定鏡を用いた古典雑音による模擬実験を行う。ショットノイズは電気雑音を発振器により光検出器の後ろに印加して模擬する。また、輻射圧雑音に関しては、固定鏡に取り付けられたピエゾ素子を使って鏡を振動させることにより模擬する。これらの模擬量子雑音が本手法により低減することを確認する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Galaxies
巻: 9 ページ: 9010009
10.3390/galaxies9010009
巻: 9 ページ: 9010014
10.3390/galaxies9010014
Prog. Theor. Exp. Phys.
巻: 05A105 ページ: 05A105
10.1093/ptep/ptab019