研究実績の概要 |
・研究者間の往来も平常を取り戻そうとする最中、露国のウクライナ侵略が勃発した。私たちは高精度フォトン検出器PHOS及びジェット対検出器DCALを運用し、本研究課題に於いてその成果輩出に責任を担ってきた。PHOS検出器は杉立(代表)が複数のロシアグループと共同建設した経緯から、その運用及びデータ解析にはロシアグループも重要な役割を担う。両国及びその周辺国も含めて研究者間における協力/信頼関係に変わりないが、国際社会的な制約下でその活動力低下は否めない。 ・このような厳しい状況ながら協働作業を継続し、2023年3月開催(ドイツ)の「硬質及び電磁探索による国際会議(HP2023)」にて、史上最高エネルギー(核子対当たり5.02TeV)の鉛+鉛原子核衝突が輻射する単光子エネルギー分布を初めて公開し、本研究課題目標のひとつを達成した。 ・原子核衝突の極初期現象解明に焦点を絞る超前方検出器FoCalの開発は、中條(分担)が中心となり精力的に展開した。E-pad, E-pixel, H-cal, trigger, readout, simulation, H/W-design等の測定器構成要素の責任分担を順次確定しながら詳細技術調書(TDR)作成に向けて活動を続けている。中條はE-pad、大山(長崎総科大)がtrigger/readoutの分担責任を担い、わが国の主体性を証す布陣を形成した。 ・2022年CERN研究所PS/SPSにて複数回の実証3号機性能テスト、2023年2月東北大学ELPHにてpad素子テスト、同年3月には「超前方物理及びその検出に関する国際検討会」開催(筑波大)などを経て、7カ国から成る国際共同研究組織のなかでもわが国の主導力を発揮した。ALICE実験組織の支援のもと国内外の理論研究者との協働も強化され、本研究課題目標のひとつを達成した。
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