研究課題/領域番号 |
19H01930
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
久米 達哉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 機械工学センター, 講師 (40353362)
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研究分担者 |
三部 勉 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80536938)
高増 潔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70154896)
道畑 正岐 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70588855)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光周波数コム / エタロン / 自由スペクトル領域 / パルス間隔 / 圧縮 / 校正 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では,三次元座標導出システムの測長網を構成する各測長路に,光周波数コムに基づく絶対測長干渉計を用いる.この干渉計では,光周波数コムの高安定高精度なパルス間隔を長さ基準として測長を行うが,パルス繰返し周波数が数10 MHzの光周波数コムを,自由スペクトル領域,FSRが数GHzのエタロンで間引く形で,そのパルス間隔をもとの数m程度から100 mm程度に圧縮して用いる. 周波数領域において,光周波数コムとエタロンの周波数特性を掛け合わせて得られた波形を,FFTで時間領域の波形に変換することでシミュレーションを行った.その結果,圧縮された光周波数コムのパルス間隔は,もとの光周波数コムのパルス繰返し周波数とは無関係に,エタロンのFSRで決まることが示された. さらに,エタロンで圧縮された光周波数コムのパルス間隔を,実際に校正測定により評価した.ここでは,ゲージブロックの両端にリンギングで密着させた2枚のガラス平行平面基盤面間距離,ゲージロック両端面間,基準干渉計の3つをそれぞれ基準とした,長さの次元での校正,エタロンに入力する光周波数コムのパルス繰返し周波数を走査して得られた波形のスペクトラムピークを求める,周波数の次元での校正を行った.その結果,シミュレーションと同様に,圧縮された光周波数コムのパルス繰返し周波数がエタロンのFSRにより変化し,さらに,その繰返し周波数がエタロンのFSRにより決まることが示された. このとき,4つの方法で得られた校正値は5桁程度で一致し,それらの拡張不確かさ(95%信頼度)は,最良で6 ppm程度であった.さらに,エタロンのFSRとそれにより圧縮された光周波数コムのパルス繰返し周波数に,数ppm/℃程度の温度依存性があることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,研究計画初年度中に複数測長路の干渉計を動作させ,3次元座標導出の予備実験に取り掛かれるようにするところまでを見込んでいたが,現状では単一測長路の干渉計の動作確認と,その長さ基準となる,圧縮された光周波数コムのパルス間隔の校正までに留まっているため.
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今後の研究の推進方策 |
計画の遅れは,圧縮された光周波数コムの校正の不確かさを,当初期待していた1 ppm前後までに小さくすることができなかったためである.その原因として,主として行った長さ基準に基づく校正では,校正測定の繰返し性を小さくすることが,困難であったためと考えられる. それに対して,年度後半から取り組んだ周波数基準に基づく校正では,より小さな不確かさでの校正が可能となり,この方式を発展させることで,上記目標が達成できるものと期待される. 一方,複数測長路干渉計の実現に必要とされる機材は,既に概ね揃えられている.その動作プログラムについては,既存の動作プログラムに,複数動作のための光スイッチの駆動と,それと同期させたデータ取り込み部分を組み込むことで,迅速な開発が可能と見込まれる.
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