本研究課題の目的は、将来の太陽系外惑星探査に向けた独自の観測技術を開発することである。その究極の科学目標は、ハビタブルな(生命の存在が期待される)地球型惑星を直接検出し、その分析により生命の痕跡を検出することである。そのため、明るい恒星を強力に(10桁オーダーに)除去する高コントラスト観測技術の開発が必要不可欠である。 2022年度は、主に以下の項目を実施した。コロナグラフ観測のためのフォトニック結晶焦点面位相マスク開発では、広帯域観測を目指した多層構造マスクの開発を継続した。特に、位相マスクの偏光特性評価および、その結果とこれまでに得たコロナグラフ性能評価との比較を行った。その結果、天体光波に所望の位相以外の望まれない位相変調が生じる可能性があるなど、今後さらなる調査が必要な要因を見出した。瞳面アポダイザ開発については、設計アルゴリズムの改良などを行い、従来よりも解像度の高い設計解や、8分割位相マスク以外との併用を想定した設計解を得ることができた。また、2021年度より引き続き、空間光変調器を利用したダークホール制御技術(光波揺らぎに起因する、コロナグラフ残留光を除去する波面補正技術)の開発を推進した。特に、本研究課題において新たに、連星系でのダークホール制御技術、多波長同時のダークホール制御技術を提案し、構築した室内シミュレータFACETおよびEXISTにおいて原理実証試験を推進した。連星ダークホール制御技術については、そのための光波面センシング法も新たな提案し、その実証試験を行った。また、多波長ダークホール制御技術については、室内試験での性能を制限している要因として、実験室の大気揺らぎに注目した。その影響を低減するため、テストベッドの安定化や、揺らぎに強いコロナグラフ法との組み合わせ試験などを実施した。
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