研究課題/領域番号 |
19H01933
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 通子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90722330)
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研究分担者 |
斎藤 貴之 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (40399291)
平居 悠 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (60824232)
馬場 淳一 国立天文台, JASMINEプロジェクト, 特任助教 (90569914)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 星団 / 分子雲 / N体シミュレーション / 流体シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、銀河中での星団形成シミュレーションを行い、得られた星団の分布と、星団進化シミュレーションから得られた、星団での連星ブラックホールの合体率を用いて、宇宙全体における星団起源の連星ブラックホール合体による重力波放出率を理論的に求めることを目的とする。本研究では、星団の星一つ一つを分解できる流体/N体シミュレーションコードの開発し、それを用いて星団形成シミュレーションを行う計画である。 本年度は、新しい流体/N体シミュレーションコードの開発を行った。本年度は、特に、一部にのみ高精度の積分法を利用する新しい計算手法の導入、大質量星からのフィードバックエネルギーを周りのガスに与えるための簡易化された手法の開発を行った。 解析的に答えがわかる問題のテストシミュレーションを行い、新規開発のコードで、解析解が再現できることを確認した。また、他の同様のシミュレーションコードを用いたシミュレーション結果との比較を行い、新規開発のコードの評価を行った。その結果、本研究で新規開発したコードでも、他の既存のコード、既存のアルゴリズムで行ったシミュレーションと同様の結果が得られることを確認した。 また、本研究の独自性である、星団の星の軌道を高精度積分し、全体の積分誤差を十分に小さく抑えたまま、分子雲中の星団の星の運動を重力ソフトニングなしで計算できることを、新規開発のコードを用いて示した。これは、今後、ブラックホール連星をシミュレーション中で取り扱うために必須の手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたコード開発のうち、積分法に関わる基幹部分は検証も含めて完了した。さらに、当初の予定にはなかった数値積分法を取り入れた新しいコード(PeTar)を組み込むことに成功し、予定していたよりも大規模かつ高精度なシミュレーションを実行できるようになった。コードについての論文は、3報、投稿済みである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は予定通り銀河スケールのシミュレーションを行う。遠方銀河モデルについてはテスト計算が終わっており、それに基づいて、国立天文台の共同利用計算機を用いてシミュレーションを行う。銀河モデル(矮小銀河程度の質量)についても、同様にシミュレーションを進める。銀河シミュレーションの結果から、クランプ同定の手法を用いて、星団候補を同定し、重力的に束縛されているかどうかを確認して星団を検出し、星団の質量と半径を決定する。その結果を用いて、銀河の星質量あたりに形成する星団の総質量(星の何割が星団として形成するか)と、星団の質量関数を明らかにする。 その結果と宇宙の星形成史に基づき、宇宙の星団形成史を星団の質量関数を含めた形で与える。シミュレーションに基づき計算した星団形成史と星団進化シミュレーションの結果から得られた星団当たりのブラックホール連星分布とを組み合わせることで、最終的に、星団を起源とするブラックホール連星の合体頻度を理論的に求める。
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