研究課題/領域番号 |
19H01934
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細川 隆史 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30413967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 星団形成 / 星形成 / 銀河形成 / 宇宙初代星 / 数値シミュレーション / 電離領域 / 超巨大ブラックホール / 輻射流体力学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は金属量の極めて少ない初期宇宙における星団の形成過程を主に数値シミュレーションを用いて明らかにすることである。これまでの研究では、この目的に応じて研究計画に沿って一連の研究を進めることができた。 2019年度は金属量ゼロの、いわゆる宇宙初代星形成の場合の連星を含む多重星系の形成過程を先進的な3次元輻射流体計算により調べた(Sugimura et al. 2020)。2020年度はこれを金属量をわずかに含む場合に拡張すべく研究を進めた。このときは熱・化学反応が変わるため星形成の様相も変化する。まず特に質量の大きな星が誕生する際の輻射フィードバックに着目して2次元輻射流体計算を行い、進化の金属量に対する依存性を初めて系統的に明らかにした(Fukushima et al. 2020a)。この低金属量の場合の3次元計算も進めて、星周円盤の自己重力による分裂過程の金属量依存性も系統的に調べた(Shima & Hosokawa, submitted)。 多数の星を含む星団形成と母体となるガス雲の破壊過程に関しては、1次元計算による遠紫外光(FUV)光による分子解離過程の役割を調べた(Inoguchi et al. 2020)。さらに、3次元輻射流体計算も行って特に進化がガス雲中に存在する金属量にどのように依存するか明らかにした(Fukushima et al. 2020b)。 これ以外にも、関連の深い研究として中質量ブラックホールへの急速ガス降着過程について、やはり特にガス中に含まれる金属量依存性に着目した研究を行った。具体的にはブラックホールに周囲のガスから働く力学摩擦(Toyouchi et al. 2020)、急速降着が起こる際の円盤内縁からの輻射フィードバックと降着効率(Toyouchi et al. 2021)、等を系統的に調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね想定内のペースで多様な研究をすすめることが出来たと考えている。特に、金属量極小の場合の円盤分裂、輻射フィードバックの金属量依存性に関する研究はともに論文化まで進んで今後の研究につなげることができたと思う。初期宇宙におけるブラックホールの急速降着成長の問題は本研究計画の主要なテーマではないものの似た側面もあり、うまく同時並行で連携しつつ成果を上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこれまでの研究を踏まえつつ、さらにこれを広げる形で様々な研究を展開していく計画である。本研究計画の主眼は星団形成であり、次の目標は金属量がわずかにある場合の多重星系形成の3次元計算が一つの目標になるだろう。すなわち、初代星形成の計算では我々がすでにやったように、円盤の重力不安定による分裂過程と質量の大きくなった原始星からの輻射フィードバックが同時に働く進化を解くような計算である。ここからさらに大きな系である本格的な星団の形成へ広げていきたいところだが、やはり計算量が問題になってくる。金属量が極小だといわゆる星の初期質量関数を銀河系と同じと仮定できなくなるので、これは計算結果として得られるような設定にしたいところだが、そうすると計算が重くなってしまう。計算量の問題は当初から想定されたことだが、やってみないと分からない点もあるので試行錯誤しながら計算可能な設定を探していくことになるだろう。星団形成に関しては、当初計画したように計算結果に基づく、いわゆる観測的可視化の方向の研究も進行している。
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備考 |
(1): 米国天文学会によるハイライト研究紹介ページ
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