研究課題/領域番号 |
19H01935
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
瀧川 晶 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10750367)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダスト / 凝縮実験 |
研究実績の概要 |
星間・星周ダストの形成を理解するために,任意の組成のガスの凝縮を模擬し,高温から低温まで基盤温度を制御できる実験をおこなうことを目指している.本年度は,昨年製作した,電子銃加熱を用いることで広くガス組成をコントロールすることを可能にした 電子銃加熱式の真空装置(MBE装置)の性能試験および予察的な実験を進めた.その結果,当初予定していた単一膜厚計では,ガスフラックスの制御が困難であることが判明し,装置に改造を加えて,2つのガス源それぞれからのガスフラックスを別にモニターして調整できるようにした.また,試料準備室を増設し,チャンバー内へのコンタミを防ぎ,同時に冷却実験時の資料交換時間の短縮が可能となった.
誘導熱プラズマ(ITP)装置は,高温の熱プラズマ中で出発試料を蒸発させ,急冷させてナノ粒子を凝縮させることができ,出発試料の組成が 比較的任意にコント ロールできる特徴をもつ.本年度は,京都大学から移設したITP装置(JEOL TP-40020NPS)の立ち上げ,性能試験をおこない,移設前と同様の性能が維持されていることを確認した.ITP装置を用いて,Al-Ca-Si-O 系で組成を変化させての凝縮実験をおこない,凝縮物の結晶構造をX線回折 装置(XRD)および透過型電子顕微鏡で分析した. その結果,赤色巨星での難揮発性ダスト放射をよく再現するダスト模擬物質の合成に成功した.本結果は,難揮発性ダストにおける Ca元素の重要性を示し,さらに組成範囲を変えた実験を進めている.
また,原始惑星系円盤でのダスト凝縮とかかわる金属酸化物分子の観測をめざして,ALMA望遠鏡 (cycle8)への観測提案をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で遅れていた実験装置の立ち上げは,今年度にずれこんだものの問題なくすすんだ.膜厚制御がうまくいかないなどの予定外の問題も生じたが,装置に改良をおこなうことで対応できた.
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今後の研究の推進方策 |
MBE装置をもちいて,Mg-Si-O系で幅広い組成比での成膜実験を進める.合成物の透過型電子顕微鏡分析,赤外スペクトル測定をすすめる.高温生成物との比較をおこない,合成条件よるダストの構造や光学特性の違いを明らかにする.同時に,昨年度おこなったITP装置を用いたAl-Ca-Si-O系の実験に,MgとFeを加え,星周ダスト模擬物質としてありうる組成範囲と形成条件の制約をめざす.また,本プロジェクトの一部として,米国でプレソーラー粒子分析を行う予定としていたが,研究計画を変更し,研究環境として実現可能である実験研究に集中させて成果をあげることを目指す.
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