研究実績の概要 |
2021年7月17日(ハワイ時間)および18日の夜に, 東アジア天文台ジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡JCMTを利用して, 大質量星形成領域G31.41+0.31における直線偏波撮像観測を遠隔観測にて実施した. この観測を行うための施設使用料を本科研費補助金をあてさせていただいた. 観測は, 観測所スタッフが山麓ヒロ市から行った. 天候は, 波長850μmのサブミリ波において偏波観測を行うのに十分な条件であり, 225 GHz帯で測定した地球大気の光学的厚さは, 0.04と良好で, 安定していた. 国立天文台の天文データ解析センターの共同利用計算機を利用して, 直ちにデータ解析パイプラインを通じて, 較正処理と画像作成を行なった. 得られた画像の感度は, これは当初想定していた気象条件を上回る好条件で観測が実施されたことによる.
波長850 μm帯のStokes Iの輝度分布を解析したところ, 全域にわたってダスト熱放射が光学的に薄いことがわかり, この領域の柱密度分布に対応する. 事前の予想通り, コンパクトで明るい放射源に向かって腕のような構造を検出できた. 波長850 μm帯で観測された偏波セグメントから磁場の向きを調べると, 当該領域中心に存在する原始的な星団へ落ち込むガスの流れにおおよそ沿って磁場が引きずり込まれていることがわかる. 大質量星を含む星団形成領域において, 原始的星団が質量を集めるうえで, 磁場に沿って質量降着しているという考えを支持するものであろう. 2022年1月の時点で波長450 μm帯のデータ解析を進めている. この結果がまとまり次第, 両波長帯のデータを総合し, 速やかにデータの保護期間内での審査論文出版を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の後半に記述したように, 天候の良さからエクストラで取得できた450 μm帯データの解析にも着手できている. そのため850 μm帯のデータだけで, 2022年春に論文出版するという当初予定からは遅れたが, 偏波率比スペクトル指数の議論にまで踏み込めるという, 科学的内容の充実を考えると, 「遅れ」というよりかは, 「当然掛かる時間をかけている」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」の後半に記述したように, 偏波率比スペクトル指数の議論にまで踏み込んだ論文を準備中である. また, イタリアの共同研究者からハーシェル宇宙望遠鏡によるデータの提供を受けており, スペクトル・エネルギー分布の解析も進めている. これにより, 当該星形成領域の分子ガスとその偏波特性の定量精度をあげたい.
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