研究課題
本研究では、現在の既存の惑星観測用多層共役大気ゆらぎ補償光学装置の補正性能を向上させるため、この装置の4個の波面センサを単一の広視野高速波面センサへ置き換える形で開発を進めている。2020年度は広視野波面センサの光学設計を行い、小開口の数(素子数)を11x11素子、その1素子(1小開口)ごとの視野を54秒角、ピクセルスケールを0.50秒角/ピクセルと決め、昨年度採用決定して調達したsCMOSカメラ(浜松ホトニクス社 C14120-20P)の諸元に合わせて波面センサのコリメータレンズの焦点距離、マイクロレンズアレイ(レンズレットアレイ)のピッチと焦点距離などの光学パラメータを決定した。マイクロレンズアレイは国内外の既存の市販品には光学パラメータが適合する製品が見当たらなかったため特注にて製作し、市販品のコリメータレンズとの組み合わせにて光学パラメータを最適化した。その結果、カメラの検出素子面上で波面センサのデータとして使用する範囲(センサ画像サイズ)を1212x1280ピクセルに収めることができ、その範囲の部分読み出しにて500fpsのフレームレートを達成できることを確認した。また、既存の軸外し放物面鏡の交換に関しては、新しい軸外し放物面鏡のマウントの機械設計をある程度進めることができた。さらに、惑星観測用多層共役大気ゆらぎ補償光学装置の開発の概要と波面センサの広視野化・高速化計画について、2020年12月にオンラインにて開催された国際光工学会の国際会議にて報告し、その収録論文を出版した。
2: おおむね順調に進展している
2020年度は、当初計画通り、1)広視野波面センサの設計・製作に関して、波面センサ光学系の光学設計および主要光学コンポーネント(コリメータレンズと特注マイクロレンズアレイ)の調達を完了し、2)惑星観測用多層共役補償光学装置の軸外し放物面鏡の交換に関して、軸外し放物面鏡のマウントの機械設計をある程度進めることができた。ただし、マウントの機械設計は完了までは至らず、この部分は当初予定より少し進捗が遅れている。
今後は広視野波面センサのコリメータレンズとマイクロレンズアレイのマウント、およびカメラのマウントの機械設計および製作を行い、広視野波面センサの組立・調整・試験を進める。また並行して、新しい軸外し放物面鏡のマウントの機械設計と製作を進め、本年度中に軸外し放物面鏡の交換を目指す。
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Proceedings of the SPIE
巻: 11448 ページ: 1144877-1--8
10.1117/12.2561196