研究課題/領域番号 |
19H01945
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
鎌崎 剛 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (00413956)
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研究分担者 |
山梨 裕希 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70467059)
野口 卓 国立天文台, 先端技術センター, 名誉教授 (90237826)
酒井 剛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20469604)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超伝導回路 / 超伝導素子 / 受信分光システム / 宇宙電波観測 |
研究実績の概要 |
本研究は、宇宙電波観測に使用される受信分光システムに超伝導回路を導入することで「常温汎用回路の超伝導回路での置き換え」と「超伝導回路で実現された信号処理回路の超伝導素子との直接接続」を実現し、これらによるシステムの省電力化と高速化を目指している。初年度の2019年度は本研究の基本構成要素である超伝導素子のSISミキサと超伝導回路で実現する「SISミキサ信号のディジタル化を処理するA/D変換器」と「そのディジタル信号の相関を処理する自己相関器」の仕様を決定し、超伝導A/D変換器および超伝導自己相関器の設計・製作と単体での評価を進めた。 SISミキサに関してはその出力信号をディジタル化する超伝導A/D変換器との直接接続に必要なインピーダンスを検討した。この結果、超伝導A/D変換器側の入力インピータンスを適切に設定することで両者のインピーダンスマッチングを取ることにし、SISミキサには既存の素子(中間周波数4-8GHz)を使用することとした。 並行してA/D変換器と自己相関器の超伝導回路技術を用いた設計と製作を行った。超伝導素子と超伝導回路の融合システムとしての動作実証とその性能評価を優先する為、いずれの回路も単純な方式を採用した。超伝導A/D変換器には変換方式として基準値と単純比較する並列比較型、ビット数2-bit、単体での目標動作周波数50GHzを採用し、超伝導自己相関器も同様に2-bitディジタル信号の相関ラグ数4、単体での目標動作周波数50 GHzを採用した。そして計算時間および使用面積の点において超伝導回路が得意とする排他的論理和演算を積極的に用いた論理合成法でこれらの超伝導回路を設計し、産業技術総合研究所の超伝導集積回路作成プロセスを用いて製作した。製作された素子は低動作周波数での基礎試験により正常動作が確認されており、さらなる性能評価が進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SISミキサと超伝導A/D変換器との間のインピーダンスマッチングの方法、超伝導A/D変換器および超伝導自己相関器の仕様を決定した。その後、超伝導A/D変換器および超伝導自己相関器の設計と製作を行い、これら超伝導回路の基礎的な単体試験において低動作周波数での正常動作を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の基本構成要素である超伝導素子および超伝導回路の製作・評価を継続すると共に本研究の主目的である両者の結合試験を開始する。 「超伝導素子であるSISミキサからの出力」を処理する「超伝導回路技術を用いたA/D変換器および自己相関器」を2019年度に設計・製作した。現在、これら超伝導回路の基本的な動作検証とその性能評価を進めており、この作業を継続する。 この作業と並行して、本研究の次の段階であるSISミキサとこれら超伝導回路を結合する試験に取り掛かる。最初に、過去に開発されて単体動作実績のある設計を用いて製作された超伝導1-bit A/D変換器をSISミキサと直結する単純な構成での動作試験を行う。これにより超伝導1-bit A/D変換器がSISミキサからの信号を適切にディジタル信号化処理できることを確認する。その後、前述の動作検証された超伝導2-bit A/D変換器および超伝導自己相関器をSISミキサと接続し、超伝導素子と超伝導回路の融合システムの動作検証と性能評価を進める。
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