研究課題/領域番号 |
19H01948
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉岡 和夫 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (70637131)
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研究分担者 |
山崎 敦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (00374893)
土屋 史紀 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10302077)
木村 智樹 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50578804)
北 元 東北工業大学, 工学部, 講師 (60756493)
垰 千尋 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 研究員 (80552562)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 衛星火山 / スペクトル診断 / プラズマパラメタ / 電子温度 |
研究実績の概要 |
本年度の繰り越し分の経費を用いて,イオ火山の活発化に伴うイオプラズマトーラスの高温電子輸送のパラメタ特定,とくに朝夕非対称性について議論を深めることができた. 具体的には,ひさき衛星のデータの中から,5つのイオ火山イベントに関連するデータを抽出し,それらに対してスペクトルフィッティング手法を通してプラズマの密度および温度を導出する手法を確立した.これまでは,頻度の低い高分解モードでのスペクトルにしか適応できなかったこのパラメタ導出を,広視野(低分解能)モードのデータにも適用可能になる手法を確立したことにより,プラズマパラメタの導出を時間軸に拡張することに成功した. NASAのJuno探査機の研究チームのその場観測データと,米国コロラド大学の研究チームが開発しているモデルを組み合わせることで,ひさき衛星のデータから導出したパラメタとの整合性を確認できた.ただし,NASA/Juno探査機の高エネルギー電子やイオン観測装置などによる,木星内部磁気圏のその場観測データの解析に関しては,当初想定していたほどの進捗は見られなかった.これは主にCOVID-19による海外渡航の制限が主な原因であるが,今後は遠隔体制でも効率よくデータ解析できるシステムを構築する.また,小研究会の開催などを通して引き続き米国の研究チームと密に連絡を取り合うことで,校正データの共有などを高頻度で進める.なお,今年度の研究成果として国際学術論文誌2編と博士論文1件,修士論文4件が発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ひさき衛星による極端紫外光の遠隔観測データと,Juno衛星によるその場観測データ,および理論モデルを組み合わせて木星周辺のプラズマ環境を紐解くという目的に対して,一定の成果を得られた.特に,イオ衛星の火山イベントに応じたプラズマ環境の暫時的な変化を追う手法を確立したことは大きな進歩である.一方で,COVID-19の影響により現地開催予定だったデータ解析会やモデル構築に関する議論を効率よく開催することができず,日本の研究チームによるJuno探査機データの解析を想定していたほど推し進めることができなかった. 今後は,遠隔での解析手法の確立を視野に入れて,現状の社会情勢に即した研究体制を構築していく.
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今後の研究の推進方策 |
米国の研究チームによるJuno探査機のその場観測データを効率よく解析する仕組みを確立し,これまで行ってきた遠隔データ,その場観測データ,および理論モデルの融合をより効率よく推し進める. 一方,ひさき衛星の運用寿命が近づいているため,データの質の低下を定量的に評価するという新たな課題も生じている.具体的には,衛星自体の指向制度が低下しているため,イオプラズマトーラスの観測データの位置シフト等の問題が生じている可能性がある. 今後の研究課題としては,ひさき衛星が取得する最新のデータに対して,指向ブレを自動で補完するシステムの構築を目指す.
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