研究課題
本研究は、冷却エシェル分光器や超高分散レーザーヘテロダイン分光器の内部光学系と望遠鏡との結合に、高透過率の中間赤外線中空ファイバーを開発・導入することで、分光器の感度の向上と望遠鏡との光軸調整の平易化・安定化の実現を目的とし、下記の研究を推進した。(1)中間赤外線中空ファイバーの真空断熱支持機構・窒素循環冷却機構を設計、試作し、液体窒素温度以下に冷却された赤外線観測装置GIGMICSと望遠鏡をフレキシブルに接続可能な、全長2mの冷却ファイバーを完成させた。そのうえで、これを用いた、中空ファイバーの伝送損失の温度依存性を、室温から液体窒素温度において測定・評価した。その結果、およそ30%の透過率向上が確認された。(2)中空ファイバを用いた常温中間赤外線光カップラーを製作し、これを中間赤外レーザーヘテロダイン分光器MILAHIに適用した。中間赤外線局部発振用QCレーザー光と、インコヒーレントな太陽光に対してヘテロダイン検波性能を確認したところ、従来用いてきた複雑な光学系と比べて遜色のないシステム雑音温度であること、また、当該中空ファイバーが院コヒーレント光に対しても80%以上の透過率を示すことを明らかにした。(3)赤外線ファイバーのみを用いて赤外線観測装置と結合する開口径1.85m軸外し放物面望遠鏡PLANETSの最終研磨方法として、オンマシン3点引きずり計測法を用いたロボットアーム研磨を開始し、計測結果の定量的な解析法を開発した。上記の新たな装置開発成果などを、国際学会SPIEでの発表4件、査読付き国際雑誌1件で報告した。
2: おおむね順調に進展している
中空ファイバーを用いた新たな中間赤外線ビーム伝送系の開発に成功した点では、当初の目的を十分に満たしており、この点では順調に推移していると考えている。一方で、Covid-19感染拡大により、開発した中空ファイバーの望遠鏡への搭載(ハワイ・ハレアカラサイトT60望遠鏡)に関わる作業や試験観測を延期せざるを得なかった。また、感染の収束に向かいつつある現在も、開発や性能評価試験に用いる各種実験機器の入手難が続き、実験室系での性能評価からさらに観測運用試験に進めないでいる。これらの点をふまえ、進捗状況区分(2)であると自己評価している。
これまでの成果を踏まえ、今後、下記の通り研究を推進させる計画である。(1)冷却中空ファイバーシステム全長の延長:PLANETS望遠鏡への適用のための目標長:6m(2)中間赤外線ファイバーバンドルの実用化(3)中空ファイバーガイド化超高分散レーザーヘテロダイン分光器のT60望遠鏡への搭載と試験観測いずれの項目においても、ハワイ・ハレアカラサイトへの滞在が可能になるまでの期間、代替となる国内の望遠鏡や模擬光源を用いた総合的試験に従事する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件) 学会発表 (11件)
Proceedings of SPIE
巻: 11451 ページ: 114515X-1 - 10
10.1117/12.2562042
巻: 11451 ページ: 114516C-1 - 7
10.1117/12.2561187
巻: 11451 ページ: 114516B-1 - 7
10.1117/12.2561939
Proceedings of SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation, 2020
巻: 11445 ページ: 1144543-1~11
10.1117/12.2556458