研究課題
研究代表者が天体観測用分光器として独自開発した冷却エシェル分光器GIGMICS(N-band全域で波長分解能R=λ/Δλ~40,000が実現可能)の内部光学系と、ハワイ・ハレアカラに設置する光学赤外線望遠鏡PLANETSを、中間赤外線冷却中空ファイバーの独自開発によって結合し、中間赤外線領域に対するガス惑星・衛星大気分子の振動回転スペクトル線のスペクトルサーベイ観測の感度向上と望遠鏡との光軸調整の平易化・安定化の実現を本研究の目的とする。本年度は下記の研究項目に取り組んだ。(1)新型赤外線中空ファイバーの分光透過率の精密測定:真空対応型位相シフト干渉計用ステージを購入し、波長8~12μmで動作する准共通光路波面分割型位相シフト干渉法に基づくイメージング分光器を構築した。この分光器を用いて、自然光およびレーザー光入射時の透過率と出射開口数(N.A)の精密決定を行った。その結果について、国内学会および国際学会で発表し、投稿論文にまとめた。(2)PLANETS望遠鏡主鏡の最終研磨:米国ハワイ大学において切削と初期研磨を施したクリアセラム製の口径1.85m軸外し放物面鏡材を、京都大学・岡山天文台の口径3.8mせいめい望遠鏡の副鏡の製作に実績のある日本国内のロジストラボ社に移設し、新開発のロボットアーム研磨機に搭載して、PLANETS望遠鏡主鏡として用いるための最終研磨と形状計測に取り組んだ。その結果について、国内学会および国際学会で発表し、投稿論文にまとめた。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、PLANETS望遠鏡の開発における下記の具体的な実験・作業項目において、当初予定した計画からの半年ないし1年の遅滞が避けられなかった。(1)東北大学からロジストラボ社へのPLANETS望遠鏡鏡材の搬入作業(2)ロジストラボ社での研磨機の製作(3)Warping Harnessによる鏡材の支持機構の構築と研磨機への設置(4)中空ファイバーの特注製作(5)緊急事態宣言にともなうロックダウンに伴う、大学での実験・作業の中断。このような状況に対処するために、2020年度に配分された研究経費の2021年度への繰越処理を行ったうえで、中空ファイバーの開発と性能評価、および、PLANETS望遠鏡の開発に注力した。
当初予定では2020年度までにPLANETS望遠鏡主鏡が完成し、国内でのファーストライト観測を遂行し、冷却中空ファイバーの性能評価を当該主鏡の主焦点からの光の導入により行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う開発の遅滞にかんがみて、下記の方針に変更の上、次年度に継続して所定の成果の取得を目指す。(1)標準星の測光による中間赤外線領域でのファイバーの性能評価を、准共通光路波面分割型位相シフト干渉イメージング分光器および広帯域安定化光源による実験室での測定によって代替する。(2)PLANETS望遠鏡主鏡の最終研磨の作業時間量削減のための、ロボットアーム研磨機上での3点ひきずり計測法の開発への注力(3)Warping Harness支持機構の開発項目の繰り上げによる、ロボットアームでの研磨量の削減と完成工期の圧縮
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 1件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 4件)
The Astrophysical Journal Letters
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