研究課題/領域番号 |
19H01954
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
薮田 ひかる 広島大学, 理学研究科, 教授 (30530844)
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研究分担者 |
池本 夕佳 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (70344398)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レーザー赤外分光マイクロトモグラフィー / 地球外有機物 |
研究実績の概要 |
3次元赤外分光マイクロトモグラフィー開発要素技術を確立するための第一段階として、レーザー光学系を導入した。2019年9月に中赤外スーパーコンテニュアムレーザー(ファイバーレーザー)(NOVAE社Coverage、782 mW、波長範囲:1.9-3.9μm)を購入した(広島大学)。このレーザーを、分子科学研究所、極端紫外光研究施設UVSORの赤外分光ビームラインBL 6Bで所有されている1次元アレイ搭載赤外顕微鏡(日本分光)に導入するため、2020年1月14-17日のビームタイムを利用して、UVSOR BL6Bへ中赤外スーパーコンティニュームレーザーを移設し作動確認を行った。ただ、ファイバーレーザーは肉眼で見えないため光路が把握しにくく、またレーザーの形状・大きさを事前に確認する必要があるため、まずは赤色半導体レーザー(5 mW)を外部光源として赤外分光計への導入を行った。スペクトル計測で14850 cm-1付近に鋭い吸収が検出されたことで、分光器に赤色レーザーが導入されていることを確認した。レーザーの位置を調整し、スペクトル強度の最適化を行ってから顕微鏡に導入したところ、視野内に赤色レーザーを確認できた。しかし、赤色レーザーがMCT検出器に入っていても、MCT検出器の検出波長上限が7800 cm-1であるため14850 cm-1の吸収は検出されず、光路を確認できなかった。その後2020年2月28日のビームタイムを利用し、再現性実験を行った。赤外顕微鏡の視野中央にレーザー位置を調整した段階で、ファイバーレーザーの赤外顕微鏡への導入を行い(3 mWまで減光)、レーザー位置調整後、赤外吸収スペクトルを取得した。しかし、レーザーのマニュアルと形状が微妙に異なり、3500 cm-1あたりで強度が下がっていた。これは石英窓、CaFビームスプリッターの吸収による可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、レーザー光源で試料の赤外スペクトル、2次元赤外イメージングを行い、回転装置機構の導入試料回転装置を赤外顕微鏡に導入するところまでを目的としていた。しかし、肉眼には見えない高強度のレーザー光源をいかに安全に顕微鏡に導入するかという点が非常にチャレンジングであり、試行錯誤に時間を費やした。また、2020年2月末のビームタイムは国内のコロナウイルス感染が始まったばかりの時期と重なったため、実験を行うための時間が制限されたことも影響した。しかし、現時点でファイバーレーザーを赤外顕微鏡に導入しスペクトルを確認するところまで到達したので、次年度に試料分析を実施できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はファイバーレーザーを3 mWまで減光し、赤外顕微鏡へ導入した。この強度より赤外放射光の強度の方が高いので、次回はもう少し強度を上げてS/Nを高めることを目指す。また、赤外顕微鏡に導入したファイバーレーザーの赤外吸収スペクトル形状がレーザーのマニュアルのものと異なる原因を追求する。石英窓をBaF窓に変えて、窓板による赤外吸収の除去を試みる。また、ビームスプリッターをCaFからKBrに変えることで長波長測定を実現させる。これらの点を改善してから、検出器を動かしビームプロファイルを取得する、試料にはモンモリロナイト、炭酸カルシウム、アスファルトを用いる。その後、回転装置を導入する。
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