研究課題/領域番号 |
19H01961
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
深町 康 北海道大学, 北極域研究センター, 教授 (20250508)
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研究分担者 |
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (30185251)
伊東 素代 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, 技術研究員 (60373453)
二橋 創平 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (50396321)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海氷 / 北極海 / 海氷厚 / 係留観測 / 衛星観測 |
研究実績の概要 |
2019年夏季には、研究代表者を中心とする北海道大学のグループがアラスカ北部に出向き、チュクチ海北東部の沿岸域に2017年夏季に設置していた超音波氷厚計を含む2系の係留系を回収し、良好なデータの取得に成功した。これで本海域における継続した海氷厚のデータは世界的に見ても稀な10年分となった。 超音波氷厚計の生データからの海氷厚の導出は非常に手間と時間がかかる作業であるが、2015-17年に本海域において取得したデータについて、この作業を実施した。 本海域におけるこれまでの係留観測データを、春季に取得した海氷のコアサンプルデータと合わせて、海氷初期に生成されるフラジルアイスが、巻き上げられた海底堆積物と接触することを示し、海底堆積物が海氷内部に取り込まれるプロセスが発生していることを示した。このことは、海氷の生成域と融解域が異なる場合の海氷による物質循環の役割を示唆している (Ito, Ohshima, Fukamachi et al., 2019, Journal of Geophysical Research: Oceans) 。 また、超音波氷厚計による係留観測データとマイクロ波放射計による衛星観測データの比較・検討を行い、後者による薄氷厚推定の妥当性を示した (Kashiwase, Ohshima, Fukamachi et al., 2019, Journal of Atmospheric and Oceanic Technology)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北極海太平洋側海域の海氷減少を調べる際に鍵となる海氷厚データの蓄積が着実に進んでおり、これまでに取得された海氷厚の解析結果については国際シンポジウムの招待講演で発表している。 また、上述した海氷への海底堆積物の取り込み過程を示した論文(Ito, Ohshima, Fukamachi et al., 2019)については、海氷が物質循環に果たす役割の重要性から大きな注目を集め、Springer Nature社の新しい学術誌nature reviews earth & environmentにおいて、Research Highlightとして紹介されている。 更に、超音波氷厚計と一緒に設置されている超音波ドップラー流速プロファイラーのデータについては、人工衛星搭載の合成開口レーダーによる海氷の漂流速度推定の検証データとしても使用し、このリモートセンシング手法の有用性を示している (Dammann et al., 2019, The Cryosphere)。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者を中心とする北海道大学のグループは、2019年夏季に回収し、良好なデータを取得したチュクチ海沿岸域の係留系の超音波氷厚計などのデータの処理・解析を実施する。更に、上記のデータと合わせて、これまでに同海域における同様の係留観測で連続的に取得されている8年間に渡る長期の海氷・海洋データを用いて、海氷厚や海水特性の経年変動の解析を進める。なお、2019年夏季に回収に至らず、現在も観測継続中の一つの係留系については、海洋研究開発機構の海洋地球観測船「みらい」の夏季航海に研究協力者の伊藤が乗船し、再度回収を試みる。 また、研究分担者の伊東を中心とする海洋研究開発機構のグループは、夏季にカナダ海盆に超音波氷厚計などを取り付けた係留系の設置を行うと共に、これまでにカナダ海盆で取得した超音波氷厚計などのデータの処理・解析を進める。 更に、これまでに北極海以外の海域も含めて実施した超音波氷厚計の係留観測データを用いて、マイクロ波放射計による薄氷厚アルゴリズムの検証作業を引き続き実施する。
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