氷期の海洋大循環・海洋物質循環についての数値シミュレーションを実施し、さまざまな古海洋データを直接的に活用することで、氷期の海洋大循環・海洋物質 循環を定量的に再現することを目指す。本研究では、氷期のなかでも最も注目が高くデータの蓄積も最も多い時期である今から約2万年前のLGMを研究の中心のターゲットとする。具体的には、「実験1:海洋大循環モデル・簡易気候モデルを用いたLGMのシミュレーション」をベースとして、「実験2:大西洋深層循環の指標となる Pa231/Th230比やNd同位体比のシミュレーション」および「実験3:海洋炭素循環によるLGMのシミュレーション」を実施する。 最終年度および研究の繰越を行った本年度において、実験1に関連した成果として、簡易気候モデルMIROC-liteを用いて氷期の多重解構造を議論した論文Ando and Oka (2021)や海洋大循環モデルの結果から大西洋深層循環のモード遷移とその氷期の急激な気候変動への関わりを議論した論文Oka et al. (2022)、実験2に関連した成果として、Pa231/Th230の全球モデルシミュレーションに関する論文Sasaki et al. (2022)、実験3に関連した成果として、海洋炭素循環モデルを用いたLGMのシミュレーション結果を報告した論文Kobayashi et al. (2022)など、本研究において実施したさまざまな研究成果について論文を公表することができた。
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