研究課題/領域番号 |
19H01965
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
長井 健容 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90452044)
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研究分担者 |
長谷川 大介 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(塩釜), 主任研究員 (10624728)
井上 龍一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(海洋観測研究センター), 主任研究員 (80624022)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 黒潮 / トカラ海峡 / 海山 / 対称不安定 / 乱流混合 / 近慣性内部波 / 日向灘 / 内部波最小周波数 |
研究実績の概要 |
まず2021年6月にかごしま丸にて、トカラ海峡における2台同時自由落下曳航観測を実施した。この観測では、自由落下曳航式乱流プロファイラーUVMPと自由落下曳航式生物化学プロファイラーSUNADAYODAにさらにカメラを搭載したものを開発し、これらを交互に繰り返し投入して高解像度学際的断面観測を実施した。観測の結果、トカラ海峡の海山上を流れる黒潮で非常に強い乱流運動エネルギー散逸率を観測し、海山下流で表層まで達する様な硝酸塩の増加が見られた。これは、これまでトカラ海峡の乱流によって、亜表層への栄養塩供給が発生することしか確認されていなかったので、新しい発見である。さらにカメラの画像を解析した結果、トカラ海峡の海山を黒潮が超える際に著しく大きな粒子数の変化が観測された。また粒子数は、クロロフィル濃度が低い所で高くなる箇所があり、撮影された粒子が動物プランクトンであるとすると、動物プランクトンによる捕食が植物ブランクトンの減少を引き起こしている効果を本カメラで捉えることができる可能性が示された。さらに、11月にもかごしま丸の観測で2台同時自由落下曳航観測を実施した。この観測時にはカメラのハウジングが故障してしまったため、乱流と生物化学パラメータの断面観測のみを実施した。その結果、11月には混合層が深くなり、下流域で低気圧性渦の様な密度構造を混合層が呈しており、混合層渦が下流域に存在していたことを示唆した。また、この混合層低気圧性渦の傾斜する密度面に沿って、硝酸塩が湧昇している様な分布をとっており、サブメソスケールの栄養塩湧昇を初めて本課題で開発した観測手法によって捉えたことを示す。また2017年のトカラ海峡における本観測手法を用いた負の渦位と強乱流結果がNatureのオープンアクセス誌、Communication Earth & Environmentに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年のトカラ海峡における本観測手法を用いた負の渦位と強乱流結果がNatureのオープンアクセス誌、Communication Earth & Environmentに掲載され、計画書には含まれていなかったカメラシステムによる撮影もある程度成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、さらに数値実験を用いて2台同時自由落下曳航観測結果を再現し、詳細なメカニズムの解明を目指す。また、この手法を用いた現場観測を、研究代表者が主席研究員となって新青丸で12月に実施する予定となっている。この観測では、これまで考慮していなかったサブメソスケールの渦・フロントに伴う湧昇の影響について、特にそれが栄養塩の表層への供給に及ぼす影響を解明することを目指す。このため、自由落下曳航観測を駆使して、三次元の渦の構造を捉え、オメガ方程式などを用いて鉛直流を推定して現場観測から硝酸塩の湧昇フラックスを定量する。さらに数値実験を用いて、サブメソスケールの渦がどの程度栄養塩の湧昇に寄与するかを見積もり、これを現場観測と比較する。これらの現場観測と数値実験の結果を合わせて検討し、黒潮が海山を流れることで生じる乱流と、海山と島を流れることで生じるサブメソスケールの渦がどの様に協働して、九州南岸の表層へ栄養塩を供給しているか、そのメカニズムの詳細を明らかにすることを目指す。
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