研究課題/領域番号 |
19H01967
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋口 浩之 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (90293943)
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研究分担者 |
柴垣 佳明 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (00319592)
柴田 泰邦 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (10305419)
下舞 豊志 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (30325039)
荻野 慎也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 大気海洋相互作用研究分野, 主任研究員 (80324937)
鈴木 順子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 大気海洋相互作用研究分野, 技術研究員 (50512878)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱帯対流圏界層(TTL) / 赤道大気レーダー(EAR) / STRATEOLE-2 / ケルビン波 / 大気不安定 |
研究実績の概要 |
熱帯対流圏界層(TTL)は対流圏とも成層圏ともつかない熱帯域特有の遷移領域であり、成層圏・対流圏間の物質交換に重要な役割を果たしている。フランスとアメリカを中心とするグループによりスーパープレッシャー気球を用いたTTLの観測キャンペーンSTRATEOLE-2が計画されている。本研究では、STRATEOLE-2キャンペーンに協同して、赤道大気レーダー(EAR)を用いた大気不安定の高分解能観測、ラジオゾンデによる気温・乱流・オゾンの観測、ライダーによるオゾン・水蒸気・雲微物理量の観測から、TTLにおける、大気不安定の発生メカニズム、雲・エアロゾルとの相互作用、成層圏対流圏間物質交換(STE)の定量的解明を目指す。スーパープレッシャー気球・ラジオゾンデ気球による水平・鉛直方向のラグランジュ観測、地上からのリモートセンシングによる鉛直方向のオイラー観測はお互いに相補的であり、貴重なデータを提供する。 本年度は、まずEARの機能向上のため、汎用のソフトウェア無線機を用いて多チャンネル受信システムの開発を行った。複数のアンテナからの受信信号が同時に得られれば、アンテナ間の信号相関を利用して空間アンテナ法により水平風測定が可能となり、またレーダーイメージングによる高分解能観測も可能となる。多チャンネル受信システムを用いた空間アンテナ法による水平風と、同時にEAR既存システムによって得られた水平風とを比較することで、開発システムの動作確認、性能評価を行った。さらに、11月~2月に実施されたSTRATEOLE-2のプレキャンペーンに協同して、EARを用いた大気不安定の高分解能連続観測に加えて、EARサイトにおいてGPSゾンデ・オゾンゾンデ・水蒸気ゾンデによる気温・乱流・オゾン・水蒸気の集中観測を実施した。これらの成果について、国際論文誌・国内学会・国際会議等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、赤道大気レーダーで多チャンネル観測を可能にする受信システムを汎用のソフトウェア無線機を用いて開発し、空間アンテナ法による水平風と、EAR既存システムによって得られた水平風とを比較することで測定精度を検証した。また、スーパープレッシャー気球観測キャンペーンSTRATEOLE-2に同期して、EARなどの同時集中観測を実施できた。成果を国際誌や国際会議等で発表した。研究は順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
汎用のソフトウェア無線機を用いた多チャンネル受信システムは、現在のところ4チャンネルまでの安定動作が可能で、短時間の8チャンネル同時受信にも成功している。今後はより多チャンネルでのシステムの安定動作を目指して、開発を進める。また、アンテナ合成方法を変えた実験を行い、空間アンテナ法による風速測定精度について検討する。昨年度に実施されたSTRATEOLE-2キャンペーンデータや赤道大気レーダー・ラジオゾンデによる集中観測データを解析し、TTLにおける、大気不安定の発生メカニズム、雲・エアロゾルとの相互作用、成層圏対流圏間物質交換(STE)などを研究する。
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