研究課題/領域番号 |
19H01970
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠藤 貴洋 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (10422362)
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研究分担者 |
松村 義正 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (70631399)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 乱流混合 / 海底斜面 / Tidal straining / 乱流微細構造観測 / 三次元非静水圧モデル |
研究実績の概要 |
2019年7月10~18日に、長崎大学水産学部練習船・長崎丸を用いて観測航海を実施し、東シナ海陸棚斜面域において、乱流微細構造プロファイラー(TurboMAP)を用いて乱流運動エネルギー散逸率、水温・塩分、濁度を、超音波ドップラー多層流向流速計(ADCP)を用いて潮汐流をそれぞれ計測した。また、これまでに東シナ海陸棚域で蓄積してきた、潮汐流と乱流微細構造の同時観測データを解析して、本研究課題の目的の一つである、tidal straining現象に伴う鉛直方向の密度フラックスの見積もりに用いるための鉛直乱流拡散係数の算出を試みた。あわせて、次年度以降に計画している乱流運動エネルギー生成率の計測に使用する、高サンプリング周波数で流向・流速を計測可能な5ビームADCPを新たに導入し、2019年11月16~25日に行われた、鹿児島大学水産学部練習船・かごしま丸による観測航海時の運用試験にて、6Hzという高サンプリング周波数でビーム方向流速を計測することに成功した。計測した潮汐流と海底斜面勾配をもとに、非静水圧モデルkinakoを用いて、二次元・回転系での数値シミュレーションを行い、tidal strainingによって海底混合層内で浮遊した懸濁粒子の正味の移動を計算した。その結果、粒径の小さい粒子は従来の研究で指摘されているように斜面を登る方向に移動するものの、粒径の大きな粒子は重力の影響が勝り、逆に斜面を下る方向に移動するという非常に興味深い発見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度新たに導入した5ビームADCPは、2019年7月の東シナ海陸棚斜面域での運用試験時に漏水トラブルがあったものの、年度内に無事修理が完了し、11月のトカラ海峡での運用試験では6Hzという高サンプリング周波数でビーム方向流速を計測することに成功した。このように観測面では、次年度以降、乱流運動エネルギー生成率の計測を計画通りに実施する目処がたった。また理論面では、二次元計算ではあるものの、tidal strainingによって海底混合層内で浮遊した懸濁粒子の移動方向が粒径に依存するという、従来の研究では全く指摘されていなかった数値シミュレーション結果が得られ、次年度以降の三次元計算への発展が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
観測面では、今年度導入した5ビームADCPを東シナ海陸棚斜面上に設置し、高サンプリング周波数で流向・流速を計測して乱流運動エネルギー生成率を算出するとともに、このADCPの近傍でTurboMAPによる乱流微細構造の時系列観測を実施して乱流運動エネルギー散逸率を計測する。そして、両者の差から乱流混合に使われたエネルギーを算出することによって、Tidal strainingに伴う乱流運動がもたらす鉛直方向の密度フラックスを明らかにする。理論面では、非静水圧モデルkinakoを用いて今年度実施した、二次元・回転系での数値シミュレーションを三次元に拡張し、二次元計算時に見られた、tidal strainingによる懸濁粒子の移動の粒径依存性についての定式化を目指す。また、得られた結果を次年度以降の観測地点の選定にフィードバックして幅広い物理パラメータ空間でその有効性を検証していく。
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