研究実績の概要 |
積雲対流は、強い降水をもたらすなど、社会的にも重要な大気現象であり、その理解およびシミュレーションにおける高い再現性が求められている。O(1 km) 以下のスケールをもつ大気乱流は、熱や水蒸気を混合するため、O(10 km) スケールである積雲対流に大きな影響を与えることが知られている。しかしながら、その時空間スケールの小ささから、大気乱流と積雲対流とのスケール間相互作用については理解が進んでいない。そこで、本研究では、それらのスケール間相互作用を理解することを目的としている。 本研究では、大気乱流と積雲対流をともに陽に解像するラージエディーシミュレーション実験を行うことにより、その相互作用を明らかにすることを試みた。 シミュレーションにおける雲微物理過程について、従来計算手法であるバルク法やビン法を用いた実験に加え、最新のラグランジュ粒子ベースの計算手法である超水滴法 (Shima et al. 2009, 2020) を用いた実験を行うことにより、積雲対流と境界層の関係について複数の視点から調べた。また、大気乱流および積雲対流は非線形が強い現象であるため、カオス性に起因する不確実性に関する影響評価も行った。これらにより、大気乱流および積雲対流のスケール間相互作用について、その性質を多角的な観点から明らかにすることが出来た。一方で、これらの間の相互作用については、まだ未解明な点も多く、今後さらなる研究を続けていくことが重要である。
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