研究課題/領域番号 |
19H01978
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芦 寿一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40251409)
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研究分担者 |
池原 研 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 招聘研究員 (40356423)
山野 誠 東京大学, 地震研究所, 教授 (60191368)
金松 敏也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門, 専門部長 (90344283)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海底活断層 / 関東地震 / 地震性タービダイト |
研究実績の概要 |
相模湾ではシロウリガイやバクテリアマット等からなる化学合成生物群集が多くの点で見つかっており,断層に沿った流体湧出の存在が推定されている.また,断層沿いの低周波微動と湧出活動との関連についての報告も複数のプレート沈み込み帯でなされている.2019年に実施した白鳳丸KH-19-5次航海では,このような湧水現象と断層運動の関係の情報を得るため,三浦海丘南西斜面の麓において,無人探査機を用いて湧水に伴う生物群集と浅部地下構造を確認し,自己浮上式熱流量計1台を断層近傍と推定される地点に設置した. 熱流量計は湧水変動の長期観測のために設置し,約1年後となる8月末の白鳳丸KH-20-8次航海で回収予定であった.回収は設置に用いた無人探査機によるものではなく音響切り離しで行ったが,機器の応答はあるものの切り離し装置の作動に至らず回収を断念した.このため当初予定していた熱流量の観測データの解析は行えていない状況である.同航海では,三浦海丘の南西斜面麓においてサブボトムプロファイラー探査で確認された断層の下盤側においてピストンコアラー採泥とマルチプルコアラー採泥を1点づつ行い,堆積物柱状試料を得た.X線CT画像撮影を行い,1m辺り10層程度のタービダイトの挟在を確認し,イベント年代推定のため放射性炭素年代測定を現在行っている.このほか,2019年度に採取した試料において,セシウム同位体と鉛-210法を用いた測定を実施し,歴史地震との対応関係を調べている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年の白鳳丸KH-19-5次航海では,主に無人探査機を用いた海底観察,SBP調査,ピンポイント柱状採泥を日中に行い,マルチプルコアラー採泥と地形調査,船のサブボトムプロファイラー探査を夜間に実施した.また,化学合成生物群集の見られる地点において,地中温度観測のため自己浮上式の熱流量計の設置を無人探査機を用いて行った.長期温度計測は比較のため生物群集の見られない地点での設置も予定していたが,センサーの槍が十分に刺さらず設置を断念した.自己浮上式熱流量計の設置点周辺にはシロウリガイとシンカイヒバリガイの生息が確認され活発なメタン湧水が推定されるとともに,その分布は断層崖の麓に連続した帯状を示し,断層に沿った湧水の存在を示唆するものであった.三浦海丘周辺では,無人探査機のサブボトムプロファイラー記録から地下構造の推定を行い,南西斜面麓での断層および堆積層の変形構造を捉えた.また,三崎海丘を北東-南西方向に連続する断層とみられるリニアメントに対し,それを横断する方向の海底下浅部構造の探査,さらに,相模湾奥の海底扇状地からの砕屑物の供給・堆積構造の探査を行った.
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度航海で三浦海丘南西斜面の麓の化学合成生物群集の地点に設置した自己浮上式熱流量計は,昨年度航海で音響切り離しを試みたところ回収を行うことができなかったため,回収手法の検討を行う.断層活動履歴の研究に関しては,無人探査機で取得したサブボトムプロファイラー記録の高度補正・揺動補正処理を継続し,相模湾東部の断層の詳細な分布と海底下浅部の堆積構造,変形構造を調べる.また,断層周辺の堆積物試料の堆積構造,古地磁気・岩石磁気学的情報,有孔虫の放射性炭素年代を調べ,断層変位の履歴の情報を得る.地震活動の履歴については,相模湾北部の海底扇状地より三浦海丘西側斜面にかけて取得している海底下浅構造断面の解析および海底表層試料の堆積学的研究を継続し,相模湾域の最近の地震履歴の情報の取得を試みる.地下からの流体湧出については,三浦海丘南西斜面の麓において取得した海底観察画像をもとに,化学合成生物群集の密度を調べ湧水経路と断層位置の関係を調べる.
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