現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に調査予定だった長野県白馬村を2019年度に前倒しして行い,中国地方中部地域の調査は2019年度と2020年度の2年間をかけて行った。新型コロナの影響等もあり,IODP Expedition 357(Atlantis Massif)により採取されて島根大学に保管されていた試料の分析等は2021年度に先送りされたが,重要な部分は概ね予定どおりに進行したと評価される。学会発表は日本有機地球科学会で行う予定であったが,新型コロナの影響により学会そのものが取りやめとなった。 2019年度は,飛騨外縁構造帯の長野県白馬村八方尾根東-岩岳山南地域(中部山岳国立公園は含まれず,その外側東方の地域)および三郡帯の中国地方中部地域鳥取県日南町多里三坂・広島県庄原市白滝山-道後山・岡山県新見市神郷高瀬-足立において,それぞれ6日間(6/29,6/30,7/1,9/8,9/9,9/10)と5日間(5/5, 9/5, 9/16, 10/6, 10/20)のルート地質調査および岩石試料採取を行った。2020年度は三郡帯超塩基性岩分布域の東縁に位置する岡山県真庭市滝の上地域と田口地域において4日間(9/3,9/4,9/8,9/9)のルート地質調査および岩石試料採取を行った。それらの試料を用いて,岩石薄片観察,炭素・水素・窒素・イオウ元素分析(長野52試料・中国地方59試料)およびGC-MS分析(鉱物粒の外側と内側の分析,長野11試料×3回・中国地方20試料×3回)を行った。これらの調査・分析は順調に進行した。 現在までの結果として,蛇紋岩形成時の熱水環境が相対的に酸化的だったこと,水の供給源には重炭酸イオンを含む海水の影響が大きかったこと,蛇紋岩化作用時に周辺からの炭化水素の移動・取込みがあったこと,蛇紋岩化作用後に岩石が固結密閉する前にバクテリア活動が起こっていたこと,などが明らかとなった。
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