本研究では、地球を含む惑星内部の水の存在形態や、マントル対流に伴う水の循環の解明を目的としている。当該年度では特に地球マントルの底に運ばれた水と金属鉄の化学反応の理解を目指し、マルチアンビル型装置とダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧発生実験を実施した。 地球の下部マントルに多く存在するブリッジマナイトが含水化したもの(含水ブリッジマナイト)と金属鉄を重ね合わせ、高温高圧下で一定時間維持した。回収試料を電子顕微鏡とX線回折により分析し、鉄に富む反応帯の形成を確認した。また、反応帯には金属鉄が含まれることが明らかとなった。これは無水条件で行った過去の研究では起こらなかった反応である。さらに、含水ブリッジマナイトと鉄の量比により反応帯幅が変化することを確認した。より現実的な多成分試料を用いた実験でも、鉄に富む反応帯の生成が確認されている。 前年度に行ったレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルを用いた実験では、120万気圧の水と鉄の化学反応を時分割X線回折測定した。得られたデータから、水と鉄の反応に伴う酸化鉄層の出現を確認した。 上記の2つの実験結果から、地球内部を循環する水が、金属鉄から成る地球中心核の表面に酸化鉄に富む層をつくることが示唆された。この層は核マントル境界の地震波超低速度層として観察されている可能性があり、これを証明するためにはさらなる研究が必要である。 また、下部マントル最上部で安定な新規含水アルミナケイ酸塩の合成に成功し、現在国際誌へ投稿中である。
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