パルス光加熱サーモリレクタンス法とレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル(LHDAC)を組み合わせて、高圧・高温におけるPtおよび MgO ペリクレースの熱伝導率を測定した。Ptの熱伝導率は特徴的な正の圧力および温度依存性を示し、125 GPa、1850 Kの条件で約210 W/m/Kに達した。MgOペリクレースの熱伝導率は140 GPa、1950 Kまで測定に成功した。これは地球の最下部のマントル条件に相当し、熱伝導率は約 90 W/m/K が得られた。これらのデータは、比熱容量計測において金属反射層と対象マントル物質の基準となるP-T依存性であり、Mbar圧力と数千ケルビン温度まで網羅することが可能となる。比熱計測では構築した実験系による基準となるデータの取得が進みつつある。 地球核の熱輸送研究にも大きな進展があった。過去10 年間にわたり、地球核の熱進化は大きな議論である。本研究では、LHDAC内で、最大176 GPaおよび2900 Kにわたってhcp鉄の熱伝導率の測定に成功した。hcp 鉄の熱伝導率の温度依存はある圧力において符号が変化することが明らかとなり、地球核相当の条件で熱伝導率は従来予想より高くなることが示唆された。また金属において熱伝導率の温度導依存性が圧力により逆転現象を示す最初の例である。 一方、地球核の予想物質である水素化鉄について、シンクロトロン X 線回折およびLHDAC内におけるピコ秒音響測定を行った。hcp FeH1.1、hcp FeH0.3およびfcc FeHを合成し、後の 2 つの相の音速を決定した。fcc FeH の音速と密度の関係が約 60 GPaで変化することを発見した。この原因として近傍に存在する磁気転移点による可能性がある。基準地球モデルと、本実験による音速-密度のデータは、地球の内核に水素が存在するという仮説を裏付けるものである。
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