研究課題/領域番号 |
19H01996
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
趙 大鵬 東北大学, 理学研究科, 教授 (70304665)
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研究分担者 |
豊国 源知 東北大学, 理学研究科, 助教 (90626871)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地震波トモグラフィー / 沈み込み帯 / 大地震 / 火山 / 地震波異方性 / マントルプルーム |
研究実績の概要 |
従来の地震波トモグラフィー法(Zhao et al.,1992, 2012)を改良し、日本列島下の精確な3次元P波速度異方性構造を明らかにしました。これにより、日本海溝から日本列島下に沈み込んでいる太平洋プレートおよびその周りのマントルにおける詳細な3次元P波速度異方性構造を解明し、太平洋プレートの沈み込み、ならびに、太平洋プレートそれ自体の変形が日本列島下のマントル対流のパターンを支配することがわかりました。本研究成果は、日本列島の火山と地震の成因および地殻変動を理解する重要な手がかりになると思われます(Wang and Zhao, 2021 Science Advances).
東南アジア地域下の全地殻と全マントル(深さ0-2889km)の3次元P波速度構造モデルを求め、この地域下の沈み込んでいるスラブとマントルプルームの深部構造を明らかにしました。この地域の広範囲に存在する新生代のプレート内部火山の起源は、マントル深部からの熱いマントル上昇流にあると思われます。特に、マントルプルームは海南プルームのみでなく、プルームクラスターの存在する可能性を指摘しました(Zhao et al.,2021 GJI).
これまでに西太平洋と東アジア地域の地殻・マントルの3次元構造に関する地震学的研究について詳しいレビューを行い、Earth-Science Reviews誌に発表しました。これらの地震学的研究結果は、大地震の発生メカニズム、島弧火山とプレート内部火山の起源、および地球深部ダイナミクスについて重要な新知見を与えました。特に、我々の提唱したBig mantle wedge (BMW)モデル(Zhao et al.,2004,2007, 2009)は東アジア地域の多くの地学現象をうまく説明できることがわかりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 新しい地震波異方性トモグラフィー法を開発し、それを用いて日本列島下の3次元異方性構造について重要な結果を求めた.また,この結果を論文にまとめ,2021年1月に著名な国際科学雑誌であるScience Advancesに発表した.
2. 東南アジア地域下の詳細な全マントル3次元P波速度構造を初めて推定し,その結果をまとめた論文を著名な国際科学雑誌であるGeophysical Journal Internationalに発表した.
3. 地震波トモグラフィーに関するレビュー論文を地球科学の著名な国際専門誌であるEarth-Science Reviewsに発表した。この論文は今日までの約1年間にもう17回も引用されました。
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今後の研究の推進方策 |
1.Hi-netとS-net地震観測網で記録された大量の近地地震の走時データの収集と処理を行い, 東北日本前弧域の詳細な3次元P波異方性構造を調べる予定です. 特にこれまでまだ分かっていない沈み込んでいるスラブ内の微細構造とスラブ内地震のメカニズムについてを調べる予定です.
2.世界の地震観測網で記録されたP波走時データを用いて, これまでに世界で起こった六つのM9.0 以上の巨大地震域の深部構造を推定し,スラブ下の異常構造が巨大地震の発生への影響について調べる予定です.
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