研究課題/領域番号 |
19H01997
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 俊嗣 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80344125)
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研究分担者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (00452699)
臼井 洋一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 研究員 (20609862)
中村 教博 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (80302248)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古地磁気 / 岩石磁気 / 初期続成作用 / 生物源磁鉄鉱 |
研究実績の概要 |
西部赤道太平洋で採取された海底堆積物コア試料の古地磁気・岩石磁気分析を行った。オントン・ジャワ海台より採取されたコアMR1402-PC3では、非履歴性残留磁化(ARM)で規格化した自然残留磁化強度変動の概要が得られ、グローバルな相対古地磁気強度変動曲線PISO-1500に概ね対比可能であることが判明した。このコアでは、ある深さ以下での磁化率の急減から還元環境による磁性鉱物の溶解が起きていると考えられるが、それでも相対古地磁気強度を復元できる可能性が明らかとなった。同じくオントン・ジャワ海台より採取された堆積物コアMR1402-PC4では、磁化率が深さとともに減少するが、磁性鉱物種や粒径の変化を伴わないことから、還元溶解はほとんど起きていないことが判明した。一方、陸源・生物源磁性鉱物の割合を示すプロクシが、規格化自然残留磁化強度と相関する結果が得られ、生物源磁鉄鉱の相対古地磁気強度記録への影響を評価するために適したコアであることが判明した。オーリピク海膨北部のIODP Site U1490コアについては、磁性鉱物の還元溶解及び陸源・生物源磁性鉱物の割合の変動に関するデータが得られた。 上記に加え、初期続成作用の古地磁気記録への影響、及び生物源マグネタイトの古地磁気記録への寄与の評価の一般化と、過去数万年間の古地磁気永年変動を高解像度で明らかにすることを目指して、日本周辺海域(南海トラフ、東海沖)堆積物コアの古地磁気・岩石磁気分析に着手した。また、白鳳丸KH-19-6次航海において、南大洋スコシア海からこの研究に用いる予定のピストン・コアが採取された。 さらに、還元環境下での生物源磁鉄鉱の溶解過程を電子顕微鏡により観察し、結晶形態により溶解の受けやすさに違いがあることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁性鉱物の還元溶解を受けた堆積物コアから、相対古地磁気強度を復元できる可能性を示すデータが得られている。一方、別のコアでは、磁性鉱物の還元溶解は当初の予想ほど起きておらず、一方で陸源・生物源磁性鉱物の割合が大きく変化していて、磁性鉱物組成変化の相対古地磁気強度への影響を評価するために適したコアであることが判明し、当初予定していなかった方向への研究の展開も期待される。これらを総合して、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
西部赤道太平洋で採取された堆積物コア試料について、古地磁気・岩石磁気分析を進める。コアMR1402-PC3における磁性鉱物が還元溶解を受けている部分は、残留磁化強度が著しく小さいため、低ノイズレベルの超伝導磁力計を用いてより詳細な古地磁気測定を行う。また、磁性鉱物溶解を受けた堆積物において古地磁気記録を担い得ると考えられる、珪酸塩鉱物に包有された磁性鉱物の定量的評価へ向けて、これを堆積物から化学的に抽出することに着手する。コアMR1402-PC4については、陸源と生物源の磁性鉱物の残留磁化獲得への寄与の違いを定量化することを目指して、FORC測定や等温残留磁化成分解析などの詳細な岩石磁気分析を行う。Site U1490コアについては、追加の岩石磁気測定及び、透過電子顕微鏡による磁性鉱物観察を行う。 南海トラフ堆積物コアについては、各種岩石磁気分析により、還元溶解の有無を検討するとともに、過去数万年間の相対古地磁気強度の永年変動曲線を構築することを目指す。また、2019年度に南大洋で採取された堆積物コアについては、古地磁気測定用試料を採取し、分析を開始する。
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