研究課題/領域番号 |
19H02010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊庭 靖弘 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80610451)
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研究分担者 |
竹田 裕介 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(PD) (50838852)
江崎 洋一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60221115)
足立 奈津子 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40608759)
西田 治文 中央大学, 理工学部, 教授 (70156082)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 古生物学 / 生物多様性 / イメージング |
研究実績の概要 |
40億年の生命進化および生物多様性変動の唯一の直接的証拠は,化石として地層の中に閉じ込められている.しかしながら,サイエンス誕生以来,人類は過去の生物多様性の数%しか捉えられていない.これが,古生物学研究の最大の障壁となっている.従来の研究ではこの要因として遺骸の急速な腐敗や化石の保存不良が考えられてきた.一方,本研究ではこの要因として,150年もの間,岩石から化石を抽出する方法に技術革新がなかったことに注目している.この問題を突破するために,世界初となる超高精度トモグラフィ装置を用いて,「岩石中の全ての化石をありのまま無差別に抽出する」革新的探査法を確立し,従来研究の障壁を突破することを目指している.本年度は, 高解像画像をスピーディにアニメーション化する手法を確立し,岩石内部の全体像を迅速に把握可能とした.次に画像解析により,岩石から化石部分のみを無差別にありのまま3Dモデル化し,個体抽出する手法を開発した.次にPre-Cambrian~後期白亜紀における100以上に及ぶ各種砕屑岩・生物岩を分析した.体化石や生痕化石などこれに含まれる全ての化石保存様式を用いた実践研究を推進した.実践研究では,従来手法に比べて化石の発見確率が飛躍的に向上したことや,未知・未記載の多様な生命化石の可視化,硬組織の内部構造観察・解析などが可能となった.これらと並行して,全1次データを公開するオンライン探査スタジオの準備も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)デジタルデータを用いた探査システムの構築,2)実践研究と有用性の検証,3)野外における試料採集調査,4)オンライン探査インフラの準備を行った.以下に示すとおり,どの研究項目についても順調に達成できた. 1)探査システムの構築: 高解像画像をスピーディにアニメーション化する手法を確立し,全体像を迅速に把握可能とした.次に画像解析により,岩石から化石を無差別にありのまま3Dモデル化し,個体抽出する手法を確立した. 2)実践研究:上述の技術について100を超える含化石砕屑岩・生物岩に応用しながら実践研究を行った.3Dモデル化した個体については詳しい分類学的検討も行った.ある分類群に注目するとその発見確率は,従来の1万倍以上になるとのベンチマークを得られ,本研究で開発している手法が画期的であることが示された. 3)野外調査:中生代を対象とした野外試料採集調査を展開し,十分な分析試料を得た. 4)オンライン探査インフラ:従来の高コスト・低寿命型から脱却したデータ保存・循環システムのフレームを検討した.国際動物命名規約に準拠し,画像を証拠標本とすることで,任意画像群を標本化できる新たな分類学的仕組みを提唱する準備を行った. 以上のことから,おおむね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続きイメージング装置を用いた実践研究を推進しながら,3D探査手法の改良を行う.具体的な実践研究として,1現生型生物相の出現と多様化,2礁生態系進化,3植物食海洋生物の探査,4極限環境の生命探査,4初期生命探査,などを設定する.1,3,4においては野外調査を行って追加標本を入手する.また,化石の発見確率など従来手法と定量的に比較し,本研究が提唱する探査システムのベンチマークを明確にする.上述の研究と並行して,得られたデータセットのソーティングを行い, Deep Archiveする方法を確立する.データベース化したデータセットは,Small-office用のストレージサーバーとパブリッククラウドおよび動画サービスなどを組み合わせ,低コストで“デジタル標本”を循環・再利用可能なシステムの開発に取り組む.今後は,上述のシステムの大枠を完成させ,パイロットスケールでの実験・公開を目指す.
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