研究課題/領域番号 |
19H02014
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大路 樹生 名古屋大学, 博物館, 特任教授 (50160487)
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研究分担者 |
井龍 康文 東北大学, 理学研究科, 教授 (00250671)
高柳 栄子 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40729208)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | モンゴル / カンブリア系 / エディアカラ系 / 藻類化石 / Chinggiskhaania / 多様度 |
研究実績の概要 |
モンゴル西部のカンブリア系下部からエディアカラ系の地質学的・古生物学的調査を行った結果、藻類の単一種 (Chinggiskhaania bifurcata) がモンゴル西部のゴビアルタイ地域の3個所、ザブハン地域の1個所の計4か所から産出することが確認され、この種がこの地域に広く分布することが明らかになった。またこの種を含む藻類化石の層序的な検討を行った結果、この種の生存期間がエディアカラ系後期からカンブリア系最下部まで広がっていたの期間に及ぶことが確認された。さらにいずれの産地においても、この種に付随する別種の藻類はほとんど確認されなかった。Bayan GolからChuaria circularisが、そしてZuun ArtsからZuunartsphyton delicatumが共産したのみである。 モンゴル西部のエディアカラ系、カンブリア系からこの藻類種が広域な地域から産すること、そして藻類種の多様度が低いことは、中国のエディアカラ系産の藻類相(Lantianや Miaoheなど)が非常に高い多様度を持つことと大きな違いがある。 この多様度の違いが、単にモンゴル西部から多種類の藻類が未発見で調査が進んでいない理由によるのか、あるいは両者の環境の違い、例えば気候条件の相違などから多様度が異なっていたのかについて、今後明らかにする必要がある。中国では当時の藻類が多様なニッチを占めるために形態的な多様性を高め、多くの種が存在していたことが議論されているが、モンゴルではそのようなニッチが提供されていなかった可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度および2021年度には予定されていたモンゴルでの調査が新型コロナ禍のために行えなかったが、2022年には西モンゴルのゴビ・アルタイ地域、ザブハン地域で調査を行うことができ、藻類化石に関する新たな発見を行うことがでた。これにより中国の同時代の藻類化石と多様度の比較を行うことが可能となり、モンゴル西部の広い地域に単一の種類が分布することが明らかになった(論文執筆中)。また海外調査が行えなかった時に開始した、モロッコのオルドビス紀初期に産出するカンブリア紀の生き残り動物群に関する研究が進展し、新たな節足動物の生き残りの種が確認された。またこの節足動物がカンブリア紀のものと比べて大型化していること、おそらくカンブリア紀からオルドビス紀に至る時期に食性の変化等が生じた可能性があることが明らかになった。さらに国内の唯一のカンブリア系堆積岩が広域に分布する茨城県日立地域の調査を開始し、その中に含まれる石灰岩からウミユリ化石を確認した。この石灰岩に含まれる砕屑性ジルコンを分析したところ、石炭紀の時代が確認され、カンブリア系に挟まれた石炭系の石灰岩であること、ウミユリはアメリカ中西部から報告されているCyclocion属に同定されることが分かった。したがって当初予想していた研究以外にも広がりをもった研究を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
海外調査が困難な時期に開始した、国内のカンブリア系を含む地域(茨城県日立市)の地質学的、古生物学的研究が進展し、その化石種と地質構造に関する解釈が進んでいる。またモロッコのオルドビス系下部から産出した節足動物化石の分類学的研究も進んでいる。これらを従来のモンゴルでの古生物学的研究に含めて今後行っていきたい。
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