研究課題
生命居住可能惑星(ハビタブル惑星)の探査対象として赤色矮星まわりの惑星が注目されており、そこでのバイオマーカーの観測が期待されている。近年の理論研究により、こうしたハビタブル惑星において水中では可視光が、地表では近赤外光が優占していると示唆されている。バイオマーカーの1つである“レッドエッジ”は、光合成生物が光波長を吸収することによって起こる反射スペクトルであるが、実際に存在し得る光合成生物が利用する光波長やその進化と対応した詳細な検討はされてこなかったのが問題である。本研究の目的は、可視光利用型光合成から近赤外光利用型光合成への進化を実験的に再現・検証することで、吸収利用する波長帯の変化がどのように且つどれだけ速やかに起こるのかを明らかにすることである。我々は、色素合成タンパク質COR(クロロフィリド酸化還元酵素)が、種によって異なる反応性を示し、それによってそれぞれの種内で可視光あるいは近赤外光吸収型の色素をもたらすことを示してきた。つまり、可視光利用から近赤外光利用の進化は、CORという1つのタンパク質の進化でモデル化することが可能である。本研究計画では、複合変異ライブラリを作製して、CORによる可視光吸収型色素合成から近赤外光吸収型色素合成への進化を試験管内及び細胞内で再現し、その進化/反応性変化の過程を解明する。CORの立体構造予測を基に、基質結合部位周辺のアミノ酸を選定して複合変異ライブラリの設計に利用した。CORの部位特異的DNA複合変異ライブラリにおいては、変異導入部位がCOR遺伝子上の分散した4箇所に存在するライブラリを作成することができた。
2: おおむね順調に進展している
デザインした箇所に変異が入らない等の問題が発生したものの、その問題も現在ではリカバリできており、研究書に記載の研究計画タイムスケールにおおむね沿って研究が進行しているため。
今後は、これまでに作成完了した複合変異ライブラリを用いて、in vitroおよびin vivoで進化型CORタンパク質を発現させ、近赤外吸収型色素合成へ変化したものを選抜する。in vitroでのタンパク質発現は主にPURE systemを用い、in vivoでの発現はエマルジョン中のホスト細菌内で行う予定である。そのため、ナノエマルジョン作成に長けた富山大学の松村講師を新たに研究分担者として加える。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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