研究課題/領域番号 |
19H02020
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梅野 宜崇 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (40314231)
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研究分担者 |
島 弘幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40312392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 座屈 / マルチフィジックス / 原子モデリング / 欠陥 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に整備したマルチフィジックスポテンシャル関数作成と検証、および座屈の分子動力学解析を引き続き行い、特に欠陥を含むモデルに展開して欠陥導入による座屈モードおよび物性変化制御の可能性について検討を行った。まず、前年度に作成したマルチフィジックス原子間ポテンシャルをStone-Wales型欠陥や原子空孔等の欠陥構造に適用してパラメータフィッティングを行い、欠陥構造に対するマルチフィジックスポテンシャルの精度および安定性などを検証した。次に、Stone-Wales型欠陥や空孔欠陥を導入したカーボンナノチューブについて座屈分子動力学解析を行い、欠陥の種類や欠陥導入箇所が座屈挙動やそれに伴う物性変化に及ぼす影響を明らかにした。欠陥導入により、アスペクト比が大きい場合には特に顕著に座屈挙動への影響が見られた。無欠陥の場合には座屈により急激かつ不連続に応力が変化するようなアスペクト比において、欠陥が導入されると初期構造にわずかなひずみが付与されることで、応力ひずみ関係が連続的になる事が示された。すなわち、アスペクト比を適切に与えることによって座屈前後の応力ひずみ挙動を制御することができることが実証された。さらに、Stone-Wales欠陥の方向の影響についても検討を行い、欠陥の対称軸とナノ構造体の対称軸にずれがある場合に螺旋状の座屈変形が誘起されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチフィジックスポテンシャルの座屈問題への適用性の検討、ならびに欠陥導入によるナノ構造体の座屈挙動のシミュレーションについて、計画通り実施することができ、当初の着眼点である欠陥導入による座屈挙動のコントロールの可能性を裏付ける結果が得られつつある。以上のように、当初計画通りに順調に研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの検討により明らかとなった欠陥が及ぼす座屈モードへの影響に関する知見を基に、同じく前年度までに整備を行ったマルチフィジックスポテンシャルを用いたシミュレーションにより、巨大物性応答を示すデバイスの設計に着手する。欠陥構造を有する1次元ナノ構造体(ナノチューブ、ナノワイヤ)について、分子動力学法による座屈挙動を実施する。前年度からの発展として、境界(拘束)条件のバリエーションやひずみ・応力変化の座屈後挙動に着目することで、実際のデバイスとして使用する際の最適な外部負荷制御法を明らかにする。マルチフィジックスポテンシャルを適用することで、座屈によるバンド構造変化から物性の巨大変化について検討し、物性変化の連続性・不連続性と境界条件や欠陥構造条件との関連性を明らかにする。多元系ナノ構造体への展開として、セラミックス系中空ナノ構造体、ペロブスカイト型ナノ構造体についての座屈挙動解析を行う。マルチフィジックスポテンシャルの多元系構造体への拡張は、ポテンシャルの基本構造を変えることなく原子構造とバンド構造のマッピングを行うことにより実現する。
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