研究課題/領域番号 |
19H02022
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高橋 宏治 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (90334630)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 3D積層造形 / レーザピーニング / 疲労強度 / 表面欠陥 / 無害化 / 圧縮残留応力 |
研究実績の概要 |
3D積層造形で作製した金属では,材料表面および内部に欠陥ができやすく,そのような欠陥が疲労き裂発生起点となり,疲労強度を低下させることが明らかとなっている.3D積層材の疲労強度向上手法は,各種熱処理やショットピーニング等,これまでにもいくつか検討されてきた.しかし,レーザピーニング(LP)についての研究はまだ少ない.そこで本研究では, LPにより導入した圧縮残留応力が,3D積層造形した金属の疲労強度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 本年度は,2種類の金属材料(ステンレス鋼,マルエージング鋼)を3D積層造形した後,熱処理,試験片作製を行った.試験片の種類は,板状試験片,引張試験片および疲労試験片の3種類とした.まず,引張試験を行い,応力ひずみ線図を取得し,引張強さ等の機械的特性のデータを得た.続いて,板状試験片を用いて,LPを複数の条件で行った.その後,X線残留応力測定装置を用いて,圧縮残留応力の深さ方向への分布を測定した.これらの結果より,疲労強度向上のために最も適していると考えられる条件を決定した.続いて,LPを施工した試験片(LP材)およびLPを施工していない試験片(Non-LP材)を用いて平面曲げ疲労試験を行った.さらに,破断した試験片の破断面を観察し,疲労破壊機構に関する考察を加えた.これまでに得られた成果は以下のとおりである. (1)LPにより,両材料において,最大で1000 MPa程度以上,深さが0.6 mm程度の圧縮残留応力を導入することができた. (2)LPにより,両材料の疲労寿命が向上するとともに,107回疲労強度が40~50%程度向上した. (3)LPの施工により表層に圧縮残留応力が導入されることで,疲労き裂発生起点は試験片表面から内部へと遷移した.これが疲労強度向上の要因である.なお,疲労き裂発生起点は空隙や未溶融部であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類の材料について,基礎的な疲労強度特性を評価するとともに,レーザピーニング施工材の疲労強度評価を行うことができた.これらの成果により,最適なレーザピーニング条件を見出すことができたたため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2種類の材料については,表面欠陥を導入した試験片を作製して疲労試験を実施する.レーザピーニングにより,どの程度の寸法の表面欠陥を無害化できるかを明らかにする.
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