3D積層造形で作製した金属では,欠陥ができやすく,そのような欠陥が疲労き裂発生起点となり,疲労強度を低下させる.本研究では, レーザピーニング(LP)により導入した圧縮残留応力が,3D積層造形した金属の疲労強度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.マルエージング鋼およびアルミニウム合金を3D積層造形した後,試験片作製を行った. これらの試験片に対して,LPまたはショットピーニング(SP)を施工した.その後,X線残留応力測定装置を用いて,圧縮残留応力の深さ方向への分布を測定した.これらの結果より,疲労強度向上のための適切なピーニングの条件を決定した.続いて,平面曲げ疲労試験を行った.さらに,破断面を観察し,疲労破壊機構に関する考察を加えた.これまでに得られた成果は以下のとおりである. (1)マルエージング鋼の溶体化処理材および時効処理材では,LPにより導入された圧縮残留応力の効果により,疲労強度がそれぞれ61%および50%増加した.LP未施工材の疲労き裂発生起点は多くが材料表面であったが,LP施工材では内部であった.このように,LPによる表層でのき裂進展の抑制が疲労強度向上の要因である.3D積層造形材の疲労強度は,LP施工により,引張強さが近い従来材の疲労限度と同等の値まで向上した. (2)3D積層造形後の粗い表面を有するアルミニウム合金に対してSPおよびLPを実施し,ピーニング施工後の各因子が疲労強度に与える影響を調査した.その結果,SPおよびLP施工により疲労強度はそれぞれ60%および80%向上した.疲労強度の向上には表面近傍の圧縮残留応力の積分値が重要であることを明らかにした.ピーニング施工による表面近傍への圧縮残留応力の導入により,3D積層造形材特有の表面粗さを疲労強度上,無害化できることを明らかにした.
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