研究課題/領域番号 |
19H02028
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菅田 淳 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (60162913)
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研究分担者 |
小山 敦弘 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (40324800)
曙 紘之 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (50447215)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 疲労損傷機構 / 異材接合材 / 微視的観察 / 疲労き裂発生 / 疲労寿命評価 / 疲労き裂進展 / マルチマテリアル |
研究実績の概要 |
マルチマテリアル接合技術として本年度は摩擦攪拌ならびに接着を取り上げ,疲労試験を実施するとともにその損傷機構解明を行った. Al合金とCFRPの異種材料間において摩擦撹拌点接合を熱源とする熱溶着継手を対象とし,疲労破壊挙動の微視的観察を実施した.得られた結果は以下の通りである.(1)各種表面処理をAl合金表面に付与することにより,継手の静的強度および疲労強度は未処理材に比べ向上したため,本研究で対象とした継手において表面処理の優位性が認められた.(2) 破面上に残存するCFRPの面積を測定し,その凝着率を測定した結果,表面処理を施工した継手において凝着率が増大する傾向を示した.したがって,表面処理を付与することにより両材間の界面強度が増加することが明らかとなった.(3)本継手の場合,複数の疲労き裂が複雑に発生・進展する様相が確認された.特に,Al合金を疲労試験時に治具固定する側に存在するスリット先端から発生する疲労き裂が最も優先的に進展する様相がみられた.この挙動は数値解析結果とも一致することが明らかになった. 接着接合に関しては,水劣化に焦点を当てて実験を行った.これまでの成果として,界面近傍の金属面に生じる錆が問題となっていた.そこで,水浸漬環境下でも錆が生じないステンレス鋼を用いてステンレス鋼板接着継手の疲労強度に及ぼす水浸漬時間の影響を調べた.その結果,通常の自動車用鋼板では3週間程度の中温(60度)浸漬により,極端に静的強度,疲労強度ともに低下するのに対して,ステンレス鋼では10週間程度の浸漬でも極端な強度低下は見られず,錆の影響が主要因子であることが分かった.接着剤自身の水劣化を調査するために接着剤単体の試験片作成を試みたが,試験片内に気泡等が生じ,成功しなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記入したように,当初の計画どおり摩擦攪拌ならびに接着接合材の疲労損傷機構の同定ができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度については以下のことを計画している.接着接合材に関しては,昨年度のステンレス鋼を用いた強度評価により,金属面に生じる錆が強度低下の主要因であることが明らかとなった.本年度は,表面状態を詳細に観察し,錆の生成状況等を明らかにするとともに,界面強度の定量的評価を実施する.また,接着剤単体の試験片を作成し,高分子の水劣化機構についての検討を行う.Al合金/CFRP異材接合体の疲労き裂は4つのタイプにより生じることが分かったが,寿命を支配するのはAl合金を疲労試験時に治具固定する側に存在するスリット先端から発生する疲労き裂であることが明らかになっているので,このスリットからのき裂発生の抑制または遅延を目指して接着剤併用継手の疲労強度特性の取得を目的とする.
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