研究課題/領域番号 |
19H02029
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村山 光宏 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (90354282)
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研究分担者 |
波多 聡 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (60264107)
朴 明験 京都大学, 構造材料元素戦略研究拠点ユニット, 特定助教 (90803479)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 実用金属材料の塑性変形 / TEM中その場観察 / 三次元観察 / 転位 / 積層欠陥 |
研究実績の概要 |
本年度は 1) 鉄鋼、非鉄合金を含む実用金属材料の塑性変形から破断いたる組織変化のTEM中その場観察を実現するための試料作製・固定技術を確立する。2) 1)を用いて、結晶粒径が変形機構の支配因子の一つとなることを実験的に証明するため、サブミクロンサイズの結晶粒径をもつオーステナイト鋼の変形・破断過程における微細組織変化を観察する。の2つの目標に向けて研究を実施した。 TEM試料作製:高強度材や軟/硬質複相材、または薄片や線材等形状が通常の切断機には適さない試料からTEM内での観察と変形が可能な薄膜試料に加工することを検討した。今年度新規導入したダイヤモンドワイヤーソー(Diamond WireTech)とクライオインスライサー(日本電子)の組み合わせにより、その場変形観察に適した形状の試料が再現性良く作製できることを実証した。通常のAr イオン研磨による加工と比較すると、変形する領域=観察範囲を限定することができ、試料形状が専用試料ホルダーに適した形にできるなど、付加的な利点がいくつか得られた。 変形・破断過程の観察:TEM中でサブミクロンサイズの結晶粒径をもつオーステナイト鋼を引張り変形し、転位の運動と粒界からの積層欠陥生成・成長を直視観察した。このような変形過程において、観察対象である欠陥構造と付近に存在する転位との相関が見られる場合と見られない場合が観察されたが、これが変形機構に関連するのか、またはTEMに特有の試料厚み方向におけるコントラストの重なりによるのかを確認するため、三次元観察が有用であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備観察の結果から、局所歪み分布可視化を行う際に、傾いた界面において結晶構造または方位が部分的に重なり合った部分の歪み計算手法の高度化・精密化を行うことが有用と判断した。これは当初予定していなかった作業であるが、2021年度中に完了できると想定している。現時点ではこれ以外の変更はなく、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在主たる試料としているオーステナイト鋼を用いて通常粒径(粗大粒)とサブミクロンサイズ粒径(微細粒)それぞれについて、その場観察法により変形・破断過程における微細組織変化を直視観察し、塑性変形機構の差異について考察を行う。また、脆性材料の試料加工に挑戦し、本研究課題の最終目的である「塑性変形の開始から局部変形・破断に至るまでの各過程で微細組織の外部応力に対する応答がどのように変化していくか、また各過程における支配的組織因子の類似性と相違性を実験的に明らかにできるか」を達成するべく、引き続き実験結果に基づく基礎的知見の獲得を目指す。
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