研究課題/領域番号 |
19H02031
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
田中 和人 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50303855)
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研究分担者 |
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
片山 傅生 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (70161065)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料 / カーボンナノチューブ / ぬれ性 / 樹脂含浸 / 成形 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の樹脂含浸性に優れた成形方法の開発とその機構を解明することである.具体的には,連続炭素繊維表面へカーボンナノチューブ(CNT)を析出させることにより,「樹脂含浸性に優れたナノカーボン修飾炭素繊維」を開発することを目的としている.また,優れた機械的特性を発揮するためには,CNT析出炭素繊維と樹脂との界面強度評価が重要となる. 昨年度導入した加熱炉と既設の高倍率デジタルマイクロスコープを組み合わせることで高温下でのぬれ性評価が可能なシステムを構築した.これにより,炭素繊維表面にCNTを析出させることで,単繊維において未処理の炭素繊維と比較して高いぬれ性を示すこと,CNTの合成時間30分,60分のCNT析出平織炭素繊維は,未処理の平織炭素繊維と比較してPA6樹脂とのぬれ性が高くなることを明らかにした.また,加熱炉と既設の微小荷重機械的特性評価装置を組み合わせて,繊維と樹脂の界面強度の測定が可能なマイクロドロップレット試験システムを構築した.ここでは,炭素繊維表面にCNTを析出させることにより,未処理の炭素繊維と比較して高い繊維樹脂界面強度を示すことをマイクロドロップレット試験により明らかにした.さらに,実際の成形品における樹脂含浸挙動を把握するために必要な真空補助付き平板金型を導入した.積層板における樹脂の含浸性を評価した結果,繊維表面にCNTを析出させた平織炭素繊維を強化繊維として用いたCF/PA6積層板は,CNTの合成時間60分のCNT析出平織炭素繊維を用いた場合,積層板における層内のCNT析出が過剰な部分で,炭素繊維間への樹脂の流入が抑制されることで,含浸性が低下する部分が見られること,CNTの合成時間30分のCNT析出平織炭素繊維を用いた場合,含浸性に優れた積層板の成形が可能であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合材料において優れた機械的特性を得るためには,繊維樹脂界面特性の最適化が重要な課題となり,その繊維樹脂界面せん断強度評価が必要である.昨年度導入した加熱炉と既設の微小荷重機械的特性評価装置を組み合わせて,繊維と樹脂の界面強度の測定が可能なマイクロドロップレット試験システムの開発をすませており,CNTが析出したような炭素繊維を対象とした界面せん断強度評価が可能となっている.さらに,実際の成形品における樹脂含浸挙動を把握するために必要な真空補助付き平板金型の導入をすませており,積層板における樹脂の含浸性評価が可能となり,概要に示したような成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である「炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の樹脂含浸性に優れた成形方法の開発とその機構の解明」に必要な,高温下でのぬれ性評価が可能なシステム,マイクロドロップレット試験システム,真空補助付き平板金型を既に構築・導入済みである.今後は,機構解明を進めるとともに,炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の樹脂含浸性に優れた成形方法の開発を実施していく.
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