研究課題/領域番号 |
19H02033
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長田 俊郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (50596343)
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研究分担者 |
尾崎 伸吾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20408727)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自己治癒材料 / セラミックス / 界面設計 / 高温強度 |
研究実績の概要 |
本研究では,自己治癒性を格段に高度化する「治癒活性相」を配向性やアスペクト比を制御した結晶粒の粒界/界面に配置しき裂を誘導することで,強度-靱性-自己治癒を兼ねそろえた革新的セラミックス基複合材料を創生することを目的としている.特に,き裂誘導-治癒-き裂再誘導機能を新規着眼点とし,特性評価・予測手法の開発を同時に実施する.2019年度は、荷重負荷時のき裂進展挙動やその経路に及ぼす組織の影響を明らかにするために、画像相関法(DIC)を用いたき裂進展挙動解析装置の開発を主に実施した.き裂進展経路の観察には高解像度の観察が不可欠であるために、既存設備であるデジタルマイクロスコープをベースに、き裂進展を追うことができるXYZステージ及びオートフォーカス機能を有する観察システムを、三転曲げ試験装置に搭載した。この際、高解像度特有の振動による問題を解決するために、除振装置やジグの設計を別途行うことで、粒径1-10μmの結晶粒の変形を観察可能な高解像度DICシステムの構築に成功している。また、具体的な試験片の詳細設計に関しては横浜国立大学にて有限要素法による最適化計算を実施している。2020年度上半期には、まずは2019年度購入した市販のアルミナを対象にき裂進展試験を実施することで、開発したDICによる評価を開始したいと考えている。また、新材料の作製に関しては、強度-靱性-自己治癒が共生する新規自己治癒セラミックスの提案を確実なものにするために、NIMS既存装置を用い各種混合粉末のゼータ電位に及ぼすpHの影響等の調査を開始した。これにより複数の組成およびアスペクト比の異なる原料粉末を適切に吸着・分散させることで高密度な焼結体の製造が可能となるだろう。また、「治癒活性相」を適切にグリーン体中に分散させることを目的とし、原料粉末の微粉化に有効なビーズミル及び粉砕ポットを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は強度-靱性-自己治癒が共生する新規自己治癒セラミックスの提案を第一目標として研究を実施してきた。これに関しては、粉末の分散状況等の整理から進めているため、当初の予定より多少遅れが出ている。他方、次年度から進める予定であった、損傷-治癒挙動の評価手法確立を前倒しで進めている。現在その場観察装置とDIC画像処理手法が確立しつつあり、当初の計画以上に研究が進んでいる。また、有限要素法を用いた試験手法の最適化に関しても、分担機関にて実施中である。以上の観点から「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
強度-靱性-自己治癒が共生する新規自己治癒セラミックスの提案を確実なものにするために、各種混合粉末のゼータ電位に及ぼすpHの影響等の調査を実施中である。また、まずはNIMSにて経験のある、強磁場コロイドプロセスを用いた配向性セラミックス作製を推進する予定である。一方、評価手法を前倒しで確立するために、今年度はアルミナ単相焼結体等を用意し、き裂進展試験を実施する予定である。また、現在コロナウイルスの影響で計画が遅延しているが、分担機関からインターンシップ生の派遣をいただき、有限要素法を用いた試験手法の最適化を推進する予定である。
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