研究課題
高強度金属材料において重要な現象の一つである「超高サイクル疲労」の特徴として内部起点型破壊が挙げられる.内部起点型破壊は一般的な表面起点型破壊よりも低い応力,長い寿命で生じる.そして,内部起点型破壊の破面上においてのみ凹凸の大きさが1マイクロメートル以下で粒状の様相を呈した特異な領域(粒状領域)が形成される.粒状領域の形成は内部起点型破壊の特性と強い相関があると考えられた.本研究では「疲労き裂が曝される環境(真空/大気)」と「力学的条件(圧縮負荷)」に着目し,粒状領域の形成機構を実験的に明らかにする.繰返し接触における表面状態の変化過程(時間変化)を捉えるため,真空環境において球面同士の繰返し接触試験(繰返し数:1億回)を行い,試験中に電気抵抗測定を実施した.繰返し数が1000万回を超えた時点から抵抗値が急激に低下することが確認された.繰返し接触部の表面にはドーナツ状の模様が観察される.大気中では接触と分離を繰り返すことにより炭化物や窒化物が形成されたのに対して,真空中では微細な凹凸が形成されることが確認された.一方,真空中で繰返し数を3500万回とした場合,球面に形成されるドーナツ状の模様の内側と外側では異なった様相が観察された.透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて微細な凹凸の直下の組織を対象とした観察ならびにASTAR法による結晶方位マップの取得を行った.微細な凹凸はナノサイズの結晶粒から形成されていることが確認され,凝着界面に近いほど粒径は小さい傾向が見られた.また,凝着界面ならびに微細組織部から小型試験片を切出し,TEM内で引張試験を行った.その結果,凝着界面の接合強度が十分に高いこと,ならびに欠陥がある場合は微細組織部の強度は低いことが明らかになった.以上から繰返し接触による組織の微細化と真空中における凝着が粒状領域の形成に関与していることが確認された.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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