提案手法を実現するには,切削工具の逃げ面テクスチャにより,効果的にプロセスダンピングを発現する新技術を開発する必要がある.そこで,2021年度は以下の研究を実施した. 1.凝着性と耐欠損性の観点から正常切削時の性能を阻害しないテクスチャ形状の探索:2020年度までに実施した検討により,ドット型や縦ライン型のテクスチャについては,凝着物が滞在しにくい性質が得られる可能性が有るものの,耐欠損性に劣ることが明らかになっていた.そこで,側面をテーパ形状にして形状的に耐欠損性を向上する設計を試みたが,検証実験においては想定した効果は得られなかった.一方で,検証実験の過程で微小な逃げ面凝着がプロセスダンピング効果を発現している可能性が高いことが明らかとなった.このことから,適度に凝着を生じる横ライン型のテクスチャが最も効果的であるとの結論に至った. 2.回転系工具を用いた加工における応用技術の開発:回転工具を対象とする場合,2自由度振動の影響について考慮する必要がある.そこで,2自由度振動に対するプロセスダンピングの特性について,有限要素法解析を利用して網羅的に計算実験を実施したところ,顕著な影響はないことが明らかとなった. 3.提案手法の総合評価:上述の各種解析による検討と評価実験の結果に基づき,ミリング実験用の工具を新たに設計し,工具の試作を行った.今後の継続検討で実験検証を実施する.また,FEMを活用したプロセスダンピング効果の推定モデルにおいて,実験を通じた総合的な検討を実施し,高精度推定のための補正モデルを考案した.
|